特別賞
塩浦 暲(新曜社)
塩浦氏は、質的心理学や質的心理学会の産みの親、育ての親といってもよい存在である。1980年代に開始された新曜社の「こどものこころ」シリーズは、画期的で先見的な企画であった。当時、心理学の書物が海外の翻訳書か教科書しかなかった時代に、新進の若手研究者の研究書を刊行する無謀ともいえる企画であったが、後にそれらの著者たちが質的研究の創始者や心理学の中核を担う研究者に育ち、それを読んだ後輩の研究者たちに多大な影響を与えた。2002年の『質的心理学研究』の創刊、それに続く 2005年以降の学会誌刊行は、本学会のみならず世界の質的研究にとっても、エポックメイキングな出来事であった。学会誌は各方面で高く評価されているが、それは塩浦氏の支援と新曜社の方々の丁寧でクオリティの高い編集作業なくては実現しなかった。その後、質的心理学関連の多くの書物が新曜社から刊行され、今日の学会の盛会を築くことができた。その貢献は、海外で SAGE 社が、質的研究の興隆に果たした役割に匹敵するものである。ひとりの編集者、ひとつの出版社が、新しい学問の創設と発展に担う役割は実に多大であることを鑑みて、特別に顕彰と感謝のことばを贈るものである。




