優秀着眼論文賞
綾城 初穂
「聖域」としての個人 ― 日本人キリスト教徒は日本社会の「宗教」ディスコ ースにどうポジショニングするのか第13号(2014),62-81.
キリスト教徒であることの語りに生じる矛盾や葛藤に、語り手がいかに対処しているのか、ポジショニング理論によって検討した論文である。著者は「何が語られたか」ではなく「どのように語られたか」というパフォーマティブな側面を分析し、「宗教」が否定的に捉えられがちな日本社会のなかでキリスト教徒であることの語り方などについて優れた議論を展開している。さらに、社会的役割ではなく一人の個人としてみずからを位置づける語りについて斬新な理論的洞察を導き出している。日本社会におけるキリスト教徒への着眼、語りのパフォーマティブな側面への着眼、語り手のポジショニングへの着眼、そしてこれらの着眼点の絶妙な組合せが光る論文である。以上から、選考委員会は本論文が優秀着眼論文賞にふさわしいという結論に至った。
優秀フィールド分析論文賞
一柳 智紀
教師のリヴォイシングにおける即興的思考 ― 話し合いに対する信念に着目した 授業談話とインタビューにおける語りの検討第13号(2014),134-154.
小学校教師による国語の授業談話とインタビューから、教師の児童の発言や学習状況に関する認識が教師の「リヴォイシング」にどのように反映しているかを、教師の信念に着目して検討した論文である。教師による児童の発話の再発話である「リヴォイシング」には、多元的な視点が反映され、教師の信念がリヴォイシングにおける即興的思考において、児童の話し合いや児童の学習姿勢の変化への期待などに反映していることが明らかにされている。本論文は、授業実践における教師の具体的な教授行為と信念と即興的思考の三者間の関連を、フィールドでの観察とインタビューを組み合わせた厚みのあるデータと複層的な分析手法から記述しており、専門職の実践の複雑さと奥行きを明晰に描き出した点が高く評価された。以上から、選考委員会は本論文が優秀フィールド分析論文賞にふさわしいという結論に至った。
優秀日誌研究論文賞
柴山 真琴・ビアルケ(當山)千咲・池上 摩希子・高橋 登
小学校中学年の国際児は現地 校・補習校の宿題をどのように遂行しているのか―独日国際家族における二言語での読み 書き力の協働的形成第13号(2014),155-175.
ドイツ居住の独日国際家族の事例に基づいて小学校中学年の国際児が親の支援を受けながら現地校と補習校の宿題に取り組む過程を検討した研究である。第2著者でもある日本人母親が記録した約2年半の日誌データを中心に、言語検査データ、第一著者によるフィールドワーク(対象児の学校および家庭生活の観察)、両親への個別インタビューといった複数のデータが組み合わされ、多角的で厚みのあるデータによって、親子間・夫婦間を軸とした家族内の相互作用を中心とした宿題支援の遂行プロセスが明らかにされている。
これらのデータの厚みと日誌記録で描かれる詳細で生き生きとした相互作用の記録が本研究の最大の魅力である。同時に、本研究は、相互作用をベースにした理論的枠組みをオリジナルに設定し、宿題支援過程の時期的変化、言語や宿題の領域による親子・夫婦間の相互作用の特徴を具体的な日常の行動においてとらえ、対象児のバイリテラシー形成に関わる重要な知見を明らかにしている。以上から、選考委員会は本論文が優秀日誌研究論文賞にふさわしいという結論に至った。




