本特集では、閉ざされている場や、見えない関係性を質的に捉える論文を募集する。
質的研究の意義の一つとして、ローカルな場や、社会の多数派の視点から見えない・見えにくい関係にアプローチできる点が挙げられる。「閉ざされた」場として、社会的・制度的に隔離されている場合、物理的・環境的に距離がある場合、当事者や関係者が周囲から自分たちを閉ざしている場合など、様々な状況が考えられる。そこには、制度的、物理的、空間的、心理的な壁が存在することもある。その場やコミュニティと、研究者との間に距離や断絶があり、「閉じた」「閉ざされた」感覚が引き起こされていることも考えられる。
「見えない」関係は、「閉ざされた」場で生じることも多いが、一見「開かれた」場にも見えない・見えにくい関係があり、それを明らかにしていくことが望まれる場合もある。なぜ「見えない」のか、どの視点に立つと「見える」のか、どの立場から「見えない」関係に関わるのか、研究者は自分のポジションに自覚的であることが求められる。閉じていたものをひらく(開く・拓く・啓く)、あるいは、見えていなかったものをみる(見る・視る・看る)なかで、人や場の関係性を捉え直す研究や、人と人、場と場をつなぎ直すような研究を歓迎したい。
一方、「閉じている」、「見えない」ことにも意味や価値があり、それを「ひらく」「みる」ことにはリスクも伴う。そうした場や関係性にどのようにアプローチするのか。閉ざされたものをひらいていこうとするとき、見えないものをみえるようにしていくときに気をつけるべきことは何か。研究のプロセスを省察し、ルール、規範、倫理などを問い直す研究も歓迎する。
具体的には、以下のような領域やテーマが考えられるが、趣旨に沿う多様な論文を歓迎する。
- 刑務所や少年院等矯正施設、閉鎖病棟、障害児施設・障害者施設、離島や過疎地域などの物理的・制度的に閉ざされた場について、その位置づけを捉え直したり、他の場や社会とのつながりを検討したりするもの
- ひきこもり、在宅介護、家族や親子の多様な関係性(例えば、血のつながらない親子や家族、ステップファミリー)、虐待、いじめ、格差、差別、孤立など見えない・見えにくい関係を取り上げ、それらの関係を捉え直したり、可視化したりするもの
- コミュニティスクール、レインボーパレード、当事者研究など、日常の生活にありながら閉ざされていることが多いものを開き、見えにくいものを可視化する実践を取り上げるもの
- 閉ざされた場や見えない関係に取り組む研究のプロセス、規範、ルール、倫理などを省察するもの
- その他お知らせ
- 【第28号】特集:「閉ざされた」場・「見えない」関係に取り組む質的研究 (北村篤司・川崎隆 責任編集)(2027年10月末日〆切)