理事長挨拶

このたび、日本質的心理学会の第6期の理事長に就任しましたサトウタツヤです。よろしくお願いします。

本学会は2004年4月に設立されて以来、学会員は1100名を数えています。この数はたとえば日本パーソナリティ心理学会よりも多いもので、1つの学問分野ではなく様々な学問分野の人々が集まる学融のアリーナを形成できていることに由来すると思われます。学会誌は市販もしている『質的心理学研究』はもちろんのこと、学会員のみを対象にした『質的心理学フォーラム』も順調に巻を重ねています。学術大会も直近(2018)の沖縄・名桜大学に多くの方が参加して熱い/厚い議論を行ったことが思い出されます。研究交流委員会の企画については、参加者を学会内に限定しないことからさらに広い学術発信・交流を実現しています。

思い返せば、2004年4月の学会設立時、私は無藤隆理事長のもとで学会事務局長を努めていました。さらにその2年前の『質的心理学研究』においても無藤隆、やまだようこ、麻生武、南博文の諸先生と編集委員を務めていました(2002)。さらに遡れば1994年くらいから「定性的研究の実際」という名の一連発表を日本心理学会の全国大会で行っていたりもしました。研究を語り合いそれを論文にして世の中に問う、というのが研究者のなすべきことであり、一方で、私は『質的心理学研究』にTEA(複線径路等至性アプローチ)の最初の論文を発表するなど学会に育てられてきました(2006)。日本質的心理学会はこうした相互研鑽の場を皆さんに用意してきたと同時に、参加した皆さんに育てられてきたと言えるでしょう。付言すれば、日本のこうした状況は海外の輸入というよりは同時多発的に起こったものでもあります。この世界的な流れを担った学会として、今後はアジアを中心に海外の研究者の皆さんと緊密な連携をとっていきたいですね。

おかげさまで、現在の本学会は、難問山積という状況ではなく、学会の活動は順調に行われていると言えます。10周年記念企画『質的心理学ハンドブック』、15周年記念企画『質的心理学辞典』など、節目となる活動も行ってきました。そのようななか、私が意識しているのは世代交代・世代継承ということです。幸いにも今期の理事会や各種委員会の委員長の方々には、大学院生として本学会と関わってきた方々が増えてきているように思います。各委員会の委員についてはさらに若い世代が関与してくれています。本学会と共に育ってきた研究者の皆さんに学会の運営を担って頂けることは大変喜ばしいことだと感じています。若い世代にバトンを渡すためにも、学会20周年を見据えて、日本における質的研究が本学会を中心にどのように展開してきたのか、振り返ってみることが大事になるでしょう。

これまで本学会では、初代・二代理事長の無藤隆先生、第三代理事長のやまだようこ先生、第4・5代理事長の能智正博先生といった学問的にも行政的にも優れた先生方(さらに言えば周囲の力を引き出すのに長けた先生方)が理事長として学会を先導してきてくださいました。こうした先生方と同じようなことができるのかはなはだ不安ではありますが、選ばれて理事長に就任する以上は皆様の力を借りて努めていきたいと思います。

学会の主役は、学会誌を読んだり、学会発表をしたり、自分の研究を論文として投稿する一人一人の会員の皆さんです。皆さんのご希望をどうぞお知らせください。3年間、どうぞよろしくお願いします。

最後に!

まだ、学会に入っていない皆さん、ぜひ仲間に入ってください!一緒に楽しく研究していきましょう!!

日本質的心理学会第4代理事長 サトウタツヤ