日┃本┃質┃的┃心┃理┃学┃会┃メ┃ル┃マ┃ガ┃2┃0┃0┃4┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
役立つ情報を共有しましょうよ
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
編集:日本質的心理学会研究交流委員会

日本質的心理学会 メールマガジン No.8 ======================2005/3/20

クッピーです。質的心理学研究第4号は、いかがでしたか?読むところが
多すぎて、まだまだ読みきれてないかもしれませんね(^^;。
道端のサクラには、花が咲く準備が終わっているようで、
もうすぐ楽しませてくれることでしょう。モクレン・コブシなどが、
すでに、咲いている地域もあることでしょうね。
今号の「風に聞く・風を追う」は、春から海外で研究をされる大谷先生です。
また今回は、著書の紹介の特別版として、交流委員会メンバーでもある、
操先生らに、「質的研究の基礎」が第1版から第2版になって、どのように
変わったかを述べてもらいました。

▽▼ 目次 ▽▼━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●風に聞く・風を追う:質的研究との出会いと再会 大谷 尚先生
●学会より会員のみなさまへ:<事務連絡・各委員会報告>
○事務局より 会費等のお願い
●「質的研究」情報コーナー:
投稿の呼びかけ・投稿要領・研究会の紹介・著書の紹介
○著書の紹介 質的研究の基礎
―グラウンデッド・セオリー開発の技法と手順
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

……………………………………………………………………………………………
風に聞く・風を追う:質的研究との出会いと再会
……………………………………………………………………………………………

質的研究のキーパーソンに、大いに語ってもらうコーナーです。
それでは、第8回目の「語り」は、大谷 尚先生です。

☆☆☆大谷 尚先生(名古屋大学大学院 教育発達科学研究科)☆☆☆

私が質的研究に出会ったのは、1990年頃のことです。当時、コンピュータを
用いた授業を研究していましたが、そのような授業は、子どもがコンピュータの
前からまったく動かず、ひとこともしゃべらないというケースもありましたので、
それまでの、逐語記録による教育方法学的な分析も、行動カテゴリーによる
教育工学的な分析も、適用できないことがありました。また、学校にコンピュータ
という異物が入ることで、それまで起きていなかったありとあらゆることが
起きるようになっており、それを分析できる手法を求めていました。
そこを見ていけば、潜在的で本質的な学校教育の文化的特性がつかまえられる
のではないかと考えたためです。
その頃、トロント大学で学位を取ったカナダ人の夫妻が東工大に滞在して
いましたが、彼らが帰国するとき、彼らの博士論文と、彼らの恩師の著書1冊を
私に置いていってくれました。それは大変興味深いもので、それが縁で、
そのRonald G.Ragsdale教授のところで、1991-1992の1年間、コンピュータを
用いた教育を対象とする質的研究を学びました。その後、その手法を日本での
自分の研究に適用しようと、いろいろ右往左往してきました。とくに初期には、
量的研究者との「闘い」が続きましたが、本来、非戦闘的な性格の私は、
闘争より協調路線を取り、質的研究を理解して頂くことに心を砕いてきました。
最近は、質的研究を知らない研究者はほとんどいません。しかし、学会誌に
投稿される論文の中には、「質的研究」だと言えばどんなデータをどう分析
しても許されるだと考えているのではないかと勘ぐりたくなるようなものも
あります。質的研究は、有名になった反面、まだまだ深くは理解されていない
のが現状です。
ところで、今これを書いているのは、成田空港の第2ターミナルです。
今日3月16日から、私は再び、トロント大学に1年間滞在します。今回の滞在の
目的は、残念ながら質的研究そのもののではなく、大学のミッションに関わる
研究です。しかし、私が質的研究を学んだところに14年ぶりに再び滞在できる
ということには、何かわくわくしたものを感じます。きくところでは、現在、
学位論文なども質的研究が大流行のようです。ぜひ、この目で見、この耳で
聞いて、質的研究をめぐる問題、課題を把握するとともに、展望、いや新たな
希望を胸に、1年後に帰国できたらと考えています。

……………………………………………………………………………………………
学会より会員のみなさまへ
……………………………………………………………………………………………

◆◆◆事務局より

★会費納入について
2005年度会費の納入をお願いします。雑誌に同封いたしました振込用紙を
ご利用ください。なお、会費納入期限を書いておりませんでしたが、
2005年4月28日とさせてい ただきます。早めの納入をお願いします。

★住所変更などのご連絡について
雑誌に同封いたしました「簡易版日本質的心理学会会員名簿」に記載された
内容に変更がある場合,また今後,所属,住所,メールアドレス,姓名など
が変更になった場合には,事務局宛( jaqp@shiraume.ac.jp )にご連絡ください。

★学会誌の定期購読について
学会誌を所属機関において定期購読していただきたくお願い申し上げます。]
現在の ところ、雑誌として所蔵している図書館が29、図書として所蔵している
図書館が124と なっております。雑誌として登録しない場合、その都度その
都度の購入がないと継続 購入されません。ご自身が所属している機関が
どのようになっているかについては
「NACSIS Webcat:総合目録データベースWWW検索サービス」
http://webcat.nii.ac.jp/ でご確認ください。

……………………………………………………………………………………………
■□■□「質的研究」情報コーナー<情報提供は、15日までにお願いします>
□■□
【注目!】各種研究会の研究交流委員会共催(または後援)の要件についてを
HPに掲載しましたので、ご参照頂きたくお願いします。
http://quality.kinjo-u.ac.jp/kyousai-youken.html
【情報!】メールマガジンの情報コーナーは、月刊のため情報が遅れることが
あります。そこで、できる限りホームページでも情報を提供します
ので、ホームページの定期チェックをお願いします。
*会員限定ページは,「ユーザー名 member パスワード q-kaiin」
で,閲覧可能です。総会資料,メルマガのバックナンバー等を
読むことができます。
……………………………………………………………………………………………

■ 著書の紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

質的研究の基礎―グラウンデッド・セオリー開発の技法と手順
アンセルム・ストラウス (著), ジュリエット・コービン (著)
操 華子(訳), 森岡崇(訳)
価格: ¥3,990 (税込)単行本: 396 p
出版社: 医学書院 ; ISBN: 4260333828 ; 第2版 版 (2004/12)

Strauss, A. & Corbin, J. : Basics of Qualitative Research:
Techniques and Procedures for Developing Grounded Theory (Second edition).
Sage Publications, 1998の全訳です。第1版(1990)の翻訳本は1999年に
出版しました。この第1版の翻訳は、社会学、看護学だけでなく、教育学、
心理学、医学などの領域の方々にもお読みいただき、翻訳者一同嬉しく
思っております。
グラウンデッド・セオリーとは、「体系的に収集され、研究プロセスを
通じて分析されたデータに基づいて構築された理論」のことをさし、
グラウンデッド・セオリー・アプローチとは、その理論の構築を目指した
質的研究の方法論であると著者らは述べています。本書の中で方法論に
ついてだけでなく、実際に理論を構築していくための方法について順次
説明をしています。

第2版の目次を紹介します。

I.基本的な考え方
1章  はじめに
2章  記述、概念上の整理、理論化
3章  質的理論化と量的理論化の相互作用
4章  研究を行っていくうえでの検討事項
II.コード化の手順
5章  データに関する詳細な分析
6章  基礎的な分析手順:問いを発することと比較を行うこと
7章  分析のための道具
8章  オープン・コード化
9章  軸足コード化
10章 選択コード化
11章 プロセスに必要なコード化
12章 条件/帰結マトリックス
13章 理論的サンプリング
14章 メモとダイアグラム
III.終えるにあたって
15章 学位論文とモノグラフの執筆、研究発表
16章 評価の基準
17章 学生からの質問とその答え

(情報提供:操 華子)

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

■ 著書の紹介【特別版】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

質的研究の基礎―グラウンデッド・セオリー開発の技法と手順について語る

操 華子先生、森岡崇先生

第1版が14章で構成されていましたが、第2版は第1版の骨格は残し
ながら、内容が整理され、3章分増えています。第1章では触れる程度
であった、質的研究と量的研究に関する著者らの立場、意見に関する章
(3章)、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いてどうやって
データ分析にとりかかるのか(ミクロ分析、一行ごと分析)ということに
関する章(5章)は新たに追加された内容です。第7章の分析のための
道具は、第1版では理論的感受性を高めるためのテクニック(6章)の
内容の多くを含めています。最終章では、質的研究を長年教授してきた
著者らが、それまで多く受けた質問をあげ、その回答を示しています。
ここに含められた質問は、質的研究を指導する立場の方々であれば一度は
受けたことのあるようなものばかりです。

第2版では、第1版に比べ、引用されているフィールド・ノート、
メモの量が多いことは指摘すべき重要なことだと思います。
第1版のコード化の手順に関する章では、著者の一人である
コービン博士の学位論文「慢性疾患を持つ妊婦の認知とその管理」で
収集されたデータが例として使われていました。第2版では、
コード化に関する複数の章にわたって、一貫して、ドラッグ使用した
10代の若者たちへのインタビュー内容が使われているので、
コード化を具体的にどのように進めていけばよいのかといことをより
読者に理解しやすいよう工夫されています。またこの具体的な作業場面
の追体験は、読者をグラウンデッド・セオリー・アプローチに引きずり
込むだけでなく、読者一人一人の手持ちの手法(例えば量的なもので
あったりKJ法であったり)との異同や関連性も、よりクリアーにイメージ
させる力を備えているように思います。

今回も著者のお一人であるコービン先生から日本語訳への序をいただき
ました。その序の中でも書かれていることですが、本翻訳が著者らの意向
とは違い、質的研究の「レシピ」本として取り扱われることへの危惧を
述べられています。質的研究、グラウンデット・セオリーに関する成書を
読み、それでも理解できなかった部分を補う、あるいはデータ分析で
わだちにはまってしまった読者に、そのわだちから脱出する方法を提示
してくれるものとして作られた本です。どうか、著者らの意向を十分に
汲み、本書が質的研究のさらなる発展、量的研究との共存に役立つ
ことを翻訳者一同願っています。

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

……………………………………………………………………………………………
[クッピーより]

第8号はいかがでしたか?みなさまの職場には、サクラがあると
思いますが、いつか、みなさまのサクラ自慢大会を、メルマガ上
で行いたいですね。わたしのサクラ自慢は、通勤途中の田舎道の
横の丘にある、ヤマザクラです。

……………………………………………………………………………………………
編集:日本質的心理学会研究交流委員会
第8号担当:長谷川元洋・本山方子・湯浅秀道
発行:日本質的心理学会 http://quality.kinjo-u.ac.jp/
●メールマガジンは、学会からの配信専用ですので返信できません。
●学会に関するご意見・ご要望は以下のWebページからお願いします。
【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
●メールマガジンに掲載する研究会等の情報やアイデアを募集しております。
情報提供・投稿の締切は、各号15日までにお願いします。
【 http://quality.kinjo-u.ac.jp/cgi-bin/yomi-mailer/y_mail.cgi?id=info 】
●アドレスの変更、配信の停止を希望される場合は、お手数ですが学会事務局ま
でご連絡ください。
●このメールマガジンに記載されている内容の一部または全てを無断で転載・
複写・転送・再編集することは、著作権の侵害となりますので、お控えくだ
さいますようお願い申し上げます。また、転載を希望する場合は、学会事務
局にご連絡下さい。   【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
Copyright (C) 2005 日本質的心理学会  All Rights Reserved.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━