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編集:日本質的心理学会研究交流委員会

日本質的心理学会 メールマガジン No.7 ======================2005/2/20

クッピーです。寒さも峠を越えたようです(暖かかったですね)。
みなさまは、無事に、風邪などをひかずにすごせましたか?
クッピーは、元気にすごしています。年度末の追い込みなどで、
忙しいと思いますが、体調管理に注意して頑張ってください!

▽▼ 目次
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●風に聞く・風を追う:斎藤清二先生
●学会より会員のみなさまへ:<事務連絡・各委員会報告>
○事務局より
○第4号のお知らせ
●「質的研究」情報コーナー:
投稿の呼びかけ・投稿要領・研究会の紹介・著書の紹介
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風に聞く・風を追う:
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質的研究のキーパーソンに、大いに語ってもらうコーナーです。
それでは、第7回目の「語り」は、斎藤清二先生です。

☆☆☆コミュニケーションについて考える
斎藤清二先生( 富山大学保健管理センター )  ☆☆☆

私がまだ医学生の頃、病院の外来実習で、患者さんの予診面接を担当したこと
がありました。系統的なコミュニケーション技法の教育など皆無の頃であった
ので、本当に冷や汗をかきながら、自分としては一生懸命患者さんのお話を聞
き、それをまとめて、指導教官の前で報告したつもりでした。指導にあたって
おられた教官は、米国帰りの颯爽たる中堅医師で、学生教育意欲も満々でした。
その先生は、私達実習生の前で、もう一度患者さんから病歴を聞きなおしました。
すると、あろうことか、私が患者さんから全く聞き取れなかったかなり重要な
事実が、私達の面前で明らかになりました。先生は、私達実習生を一瞥しながら、
勝ち誇ったようにこう言われました。「君、患者さんの大切な話を聞き落とした
ようだね。これは、患者さんが悪かったのかね、それとも君が悪かったのかね?」
もちろん、患者さんに落ち度があろうはずがなく、私に責任があったことは明白
でした。しかし、その時、私の中に、むくむくと反骨の虫が頭をもたげて
来ました。「フィフテイ・フィフテイだと思います」。
気づいた時には、そういう言葉が、私の口をついて出ていました。
教官の顔色がさっと変わり、その後私達がこっぴどく叱られたことは言うまでも
ありません。

その後、30年を越える時が流れて、私はその時のできごとをこう解釈する
ようになりました。「患者さんが悪いのでも、私が悪いのでもなく、私と患者
さんの両方が悪いのでもなく、私と患者さんの両方と無関係な何かが悪いのでも
ない。私と患者さんの関係が不十分だっのだ」。このできごとは、私の心の奥深く
沈潜し、その後、私が医療コミュニケーションに本気でとりくむモチベーション
となりました。臨床現場においてもっとも重要なことは、「どのようにして、
その場に良い関係を創り出しうるか?」ということだ、というのが、
私の作業仮説でした。

しかし、最近になって、本当に大切なことは、これでも説明しきれていないの
ではないかという思いが強くなっています。私と患者さん、私と他者との一般的な
関係とは、どういうものなのだろうか? 関係性とは、それ自体が私と他者とを
包み込むものであり、私が対象化して操作できる「要素」ではないのです。私が
関係性を変化させようとすれば、その行為自体が、私自身をも変化させてしまい
ます。「私」と「他者」と「私と他者との関係性」が織りなすダイナミックな
構造を、一般的に言語記述することが可能なのだろうか?
この、たいへん難しい、しかし、すべての対人援助職にとって、絶対に避けて
通れない課題に挑戦するための有効な武器は、質的研究法しかありえない、
と最近の私は思っています。

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学会より会員のみなさまへ
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◆◆◆事務局より

雑誌送付時に,名簿(氏名,所属,メールアドレス)を配布します。
所属やメールアドレスの変更がある方は,2月中に事務局まで変更内容
をご連絡ください。

◆◆◆研究交流委員会より

○メンバーが増えました
本学会の看護系会員の増加に伴って、研究交流委員会も看護系のメンバーの
加入をお願いすることになりました。そこで聖ルカ・ライフサイエンス研究所
で看護リサーチ主任をされている操華子さんに、メンバーになっていただくこと
をご承諾いただきました。

◆◆◆編集委員会からのお知らせ

○『質的心理学研究』第4号発刊間近!
―特集:質的心理学のあり方―
(責任編集 やまだようこ・無藤 隆・サトウタツヤ)
『質的心理学研』第4号は、3月末の発刊をめざして、仕上げの作業にかかって
おります。内容は前号のメルマガでお知らせしました通り、「特集 質的心理学
のあり方」として日本質的心理学会設立集会の対談やシンポジウム、第1回総会
での講演論文、学会理事長による論文、そして一般会員からの投稿論文10本、
そして書評として『ワードマップ  質的心理学』(新曜社)へ異なる分野5人の
方から寄せられた書評が掲載される予定となっておりますので、ご期待くださ
い。
尚、2004年度に入会された方には、この第4巻が新曜社の方から配布される予定
になっています。

○第5号(2006年3月発刊予定)の特集論文の締切が近づいています!
先にもお知らせしています通り、 第5号の特集は、「臨床と福祉の実践」
(能智正博 責任編集)です。質的研究は心理学だけではなく、教育学、看護
学、福祉学、医学などの実践領域においても注目されており、学際的な交流と
情報交換の場をもつことでいっそうの成果が得られると予想されます。
そこで第5号では、心理臨床、医療、福祉、その他援助場面、およびそこに
関わりをもつ人の言動を対象とした質的研究論文を幅広く掲載する予定です。
その現場における相互作用、関わる人々の語りやライフストーリー、調査者と
被調査者の関わりなど、検討すべき問題は多岐にわたり、心理学に限らず様々な
分野や視点からのユニークな研究の投稿をお待ちしています。締切は2005年
3月末ですので、あと1ヶ月半ほどになりました。投稿を予定されている方は、
投稿規定上のフォーマット
( http://quality.kinjo-u.ac.jp/ )を参照して最後の仕上げをお願いいたし
ます。

なお、第5号「一般論文」は、2005年5月末まで募集を続けています。
(副編集長 能智正博)

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■□■□ 「質的研究」情報コーナー
□■□
【注目!】各種研究会の研究交流委員会共催(または後援)の要件についてを
HPに掲載しましたので、ご参照頂きたくお願いします。
http://quality.kinjo-u.ac.jp/kyousai-youken.html
【情報!】メールマガジンの情報コーナーは、月刊のため情報が遅れることが
あります。そこで、できる限りホームページでも情報を提供します
ので、ホームページの定期チェックをお願いします。
*会員限定ページは,「ユーザー名 member パスワード q-kaiin」
で,閲覧可能です。総会資料,メルマガのバックナンバー等を
読むことができます。

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■ 研究会の紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

■第2回「奈良フォーク・サイコロジー研究会」のご案内

本研究会(世話人:麻生武、森岡正芳、浜田寿美男)は、フィールド実践や
ナラティブに現れる生活世界の論述の可能性や、質的記述的手法による
研究のもちうる公共性について探究します。皆さまご参加ください。

◆日時:2005年3月5日(土)、午後1時30分~5時
◆場所:奈良女子大学文学部北棟1階会議室
◆会費:300円
◆参加申し込み:下記事項を記入したEメールを事務局まで
ご送信ください。
Subject:「奈良FP研究会」
本文:1)氏名、2)E-mailアドレス、
3)所属機関・学生は学年、4)専門分野、
5)次回以降の研究会案内:メールでの
配信希望の有無
◆申し込み・問い合わせ:事務局(奈良女子大学文学部本山研究室)
E-mail: re-moto@mbk.nifty.com
◆研究会HP:
http://www5e.biglobe.ne.jp/~mottonet/folk-psychology.htm

◆内容1:研究発表
徳田 治子さん(九州女子短期大学)
「人生の語りに立ち会う作法:ハンセン病国倍訴訟における“人生被害”
の聴き取りプロセスをめぐって」
●法と心理学において、語りの問題は目撃証言や供述分析など事実性や
真偽をめぐり展開しています。本発表では、ここにナラティヴという
枠組みを持ち込み、訴訟をめぐって行われた弁護士による原告の人生
/被害の聴き取りプロセスを追い、自己の経験(人生)を被害として
語る/聴き取る行為の意味について考えていきます。
人が自らの意図を超えた被害とそこからの回復をどのように求め成し
遂げようとするのか、また、その際、被害の聞き手として立ち現れる
他者は、専門職として一人の個人として、その被害(声)にどのように
向き合い聴き取り得るのか。そのような問いを通して、他者の人生の
語りに立ち会う研究者の責任や専門性について考えます。

◆内容2:公刊論文の論評–概要紹介は行いません。
論文(テキスト)は各自で準備され事前に読了ください。
テキスト:矢守克也(2003)「4人の震災被災者が語る現在:語り部活動の
現場から」(質的心理学研究,2号,29-55.新曜社)
評者:松島 恵介さん(龍谷大学)/矢守 克也さん(京都大学、著者)/
森岡 正芳(奈良女子大学、世話人)

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■国際コミュニケーション・シンポジウム開催のお知らせ

来る3月5日、青山学院大学(青山キャンパス)にて国際コミュニケーション・
シンポジウムを以下の通り開催いたします。趣旨・会場・時間・申し込みなどに
関する詳しい情報は、

http://www.sipeb-square.net/sipeb-blog/ica/archives/000011.html

をご覧下さい。【転載御自由】

青山学院大学国際政治経済学部 抱井尚子
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-青山学院大学大学院、国際コミュニケーション専攻創設10周年記念-
国際コミュニケーション・シンポジウム
テーマ「専門領域としての国際コミュニケーション:現状と今後の展望」

◆日時:2005年3月5日(土)、午後1時30分~5時
◆場所:青山学院大学
◆参加申し込み:下記のアドレスより
http://www.sipeb-square.net/sipeb-blog/ica/archives/000011.html

10:45-11:45
基調講演(1)ゲリー・ウィーヴァー(アメリカン大学)
「専門領域としての国際コミュニケーションの進展」
“The Evolution of International Communication as a Field of Study”
Gary Weaver, PhD, American University, U.S.A.

13:30-15:30
パネル・プレゼンテーション
永田アデア(立教大学大学院)
「異文化間コミュニケーションの実践:日常的内省による平和構築 」
“The Practice of Intercultural Communication: Walking Meditation and
Everyday Peacemaking”
Adair Linn Nagata, PhD, Rikkyo Graduate School of
Intercultural Communication

本名信行(青山学院大学)
「アジアの言語としての英語:多文化理解の視点から」
“English is an Asian Language: A Multicultural Perspective”
Nobuyuki Honna, Aoyama Gakuin University

リチャード・エヴァノフ(青山学院大学)
タイトル:「倫理問題をめぐる異文化間対話アプローチ」
“A Communicative Approach to Intercultural Dialogue on Ethics”
Richard Evanoff, PhD Aoyama Gakuin University

15:45-16:45
基調講演(2)ゲリー・ウィーヴァー (アメリカン大学)
「カルチャー、コミュニケーション、コンフリクト」
Culture, Communication, & Conflict”
Gary Weaver, PhD, American University, U.S.A.
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■立命館大学人間科学研究所学術フロンティア推進事業公開企画

シリーズ「エイブル・アーツとしての対人援助論」第1回

「いま、スローな援助を考えるー「べてるの家」を招いて
『交換モデル』による『非援助的な援助』のあり方を問う」

3月6日(日) 午後1時~午後4時30分
会場:立命館大学衣笠キャンパス 以学館1号ホール
講師:向谷地 生良(むかいやち いくよし)氏
(北海道医療大学看護福祉学部助教授・浦河べてるの家)
他に「べてるの家」のメンバー数名のご参加を予定
望月 昭(立命館大学文学部教授・人間科学研究所長)
中村 正(立命館大学産業社会学部教授)

詳細は、以下のホームページを参照ください。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/hs/kikaku_2004/beteruie/beteruie.html

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[クッピーより]

第7号はいかがでしたか?研究交流委員会のメンバーも増え、ますます
がんばって、交流を深めるお手伝いができるように努力してまいりますので、
なにとぞ、よろしくお願いします。

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編集:日本質的心理学会研究交流委員会
第7号担当:長谷川元洋・本山方子・湯浅秀道
発行:日本質的心理学会 http://quality.kinjo-u.ac.jp/
●メールマガジンは、学会からの配信専用ですので返信できません。
●学会に関するご意見・ご要望は以下のWebページからお願いします。
【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
●メールマガジンに掲載する研究会等の情報やアイデアを募集しております。
http://quality.kinjo-u.ac.jp/cgi-bin/yomi-mailer/y_mail.cgi?id=info
●アドレスの変更、配信の停止を希望される場合は、お手数ですが学会事務局ま
でご連絡ください。
●このメールマガジンに記載されている内容の一部または全てを無断で転載・
複写・転送・再編集することは、著作権の侵害となりますので、お控えくだ
さいますようお願い申し上げます。また、転載を希望する場合は、学会事務
局にご連絡下さい。   【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
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