締切: 2023年10月末日(厳守)→(受付終了)

特集趣旨

本特集では、すでに知見が蓄積されてきた「障害」と「病い」をあらためてとりあげる。「障害」や「病い」のある本人、その家族(親、きょうだい、配偶者等)、支援者のおかれている環境は多様化している。「障害」や「病い」の定義やカテゴリー自体のみならず、本人のライフスタイルも変わってきた。この背景には、国連障害者権利条約の批准、障害者差別解消法、障害者総合支援法の施行といった政策動向、医療あるいは医学的リハビリテーション等の変化がある。とはいえ、「障害」や「病い」のある人は、単なる支援の受け手ではない。障害者自ら研究を行ったり、SNSにより自分の経験を社会に伝えたりすることにより、「障害」や「病い」の社会的イメージを変えている。東京2020パラリンピックのような障害者スポーツ、障害者の芸術活動もこれらの一つだろう。一方、新型コロナウイルスの流行は、誰もが「病い」を経験することを意味しているばかりか、「新たな生活様式」は、自明視されてきた行動の変容をも迫っている。

このような大きな変化の渦中にあって、従来の知見の再検証、あるいは、新たな研究方法論を打ち出すことが期待される。本特集では、心理学はもとより、社会福祉、看護、リハビリテーション、特別支援教育、高等教育機関での障害学生支援、障害者スポーツなど、広く関連領域での「障害」や「病い」をめぐる質的研究を期待する。以下は具体例の一部である。これに限らず、挑戦的な論文を歓迎する。

①「障害」や「病い」のある人、支援者、家族(親、きょうだい等)の経験に関する質的研究

「障害」や「病い」に関連する人々の経験を豊かに記述している研究であり、インタビューのみならず、参与観察、ビデオ撮影、ドキュメント分析、それらの組み合わせといった、さまざまな質的調査の方法を用いた研究を求める。また、調査期間についても、ライフサイクル、ライフステージを通した経験を記述するために、数年単位のものも対象とする。

なお、「障害」や「病い」をめぐって、子ども、高齢者、ジェンダー、エスニシティに関する複合的問題を抱えている人々やその支援者、家族に関する質的研究も期待している。ケーススタディも歓迎する。

②「障害」や「病い」の定義、カテゴリーとその境界線をめぐる研究

「障害」や「病い」の定義やカテゴリーそのものや、その拡張について、理論と実践を往還して検討された研究の投稿を期待する。

「障害」や「病い」の質的研究の方法論に関する研究

GTA、M-GTA、KJ法、TEA、テキストマイニングなど、現在採用されている質的研究の方法論に関する理論的考察、「障害」や「病い」を巡っての研究倫理に関する理論的考察も求める。