質的心理学会研究交流委員会では、質的研究を学びたいけど学ぶ環境がないという初学者の方や、自分が普段使っている方法論とは異なる方法論を学んで、質的研究に対する理解を深めたいというご要望にお答えするために、方法論についての講習会を開催しています。今回は、グラウンデッド・セオリー・アプローチ、ビジュアルナラティブ、ELANという多彩な方法論を取り上げます。質的研究の基本としてグラウンデッド・セオリー・アプローチを改めて学んだ上で、新しい技法であるビジュアルナラティブやELANという新しい方法を学ぶなど組み合わせてくださっても結構ですし、単体でも受講いただけます。人数に限りがありますが、多くの方のお申込みをお待ちしております。

日時

2020年2月23日-24日

場所

武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス(JR・地下鉄市ヶ谷駅徒歩3分)

参加費

日本質的心理学会会員(2020年度から入会申し込み中も含む):1企画につき1000円 当日払い
非会員:1企画につき4000円

申込先

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プログラム概要

2月23日「グラウンデッド・セオリー・アプローチという研究法」
講師:戈木クレイグヒル滋子・西名諒平(慶應義塾大学)

2月24日「ビジュアル・ナラティブを学ぶ」
講師:やまだようこ(京都大学名誉教授)

2月24日「ELANを使いこなす」
講師:細馬宏通(早稲田大学)

「ビジュアル・ナラティヴを学ぶ」

日時

2020年2月24日(祝)13:00ー17:00

講師

やまだようこ(京都大学名誉教授・立命館大学OIC総合研究機構)

企画概要

コラージュをつかったビジュアル・ナラティヴのワークショップを通じて、ビジュアル・ナラティヴの理論と方法を実践的に学ぶ。

タイムテーブル

13:00-13:40 ビジュアル・ナラティヴWS1 コラージュ制作
13:50-14:50 ビジュアル・ナラティヴWS2 コラージュ発表会
15:00-17:00 ビジュアル・ナラティヴの理論と方法(講義と討論)

参考図書

(A)『N:ナラティヴとケア9号 (やまだようこ編)ビジュアル・ナラティヴ-視覚イメージで語る』遠見書房
(B)『人生を物語る-生成のライフストーリー』(やまだようこ編)ミネルヴァ書房

持ち物
  • はさみ、のり(この2点は必須です。)
  • 描画用具、コラージュ制作の材料(雑誌、広告、新聞、布、ひも、箱、おもしろそうなもの何でも。)
    (これらは持ち寄ったものを共有して使うので、手持ちのもので結構です。コラージュは、即興でありあわせの材料を組み合わせて制作を楽しみます。前もってコラージュの内容を考えて材料を集めないようにしてください。)
  • 画用紙は、会場で準備します。

「ELANを使いこなす」

日時

2月24日(祝)13:00ー17:00

講師

細馬宏通(早稲田大学文学学術院教授)

企画概要

ELANはマックス・プランク心理言語学研究所で開発された、映像と音声に注釈を入れるフリーのソフトウェアである。映像音声データの時間情報と記述を結びつけることができ、アイディアメモ、コーディング、質的データ分析などに広く応用できる。この講習では、簡単な映像音声データを素材に、アノテーション(注釈作成)とコーディング、分析、結果の出力までを学ぶ。また、アイディアを出すプラットフォームとしての活用方法など、さまざまな応用例も紹介する。映像と音声をもとにデータを捉え直したい研究者向け。ELANの初学者から中級向け。

タイムテーブル

13:00- データの読み込みと入力の準備
13:30- コーディングと管理語
15:00- サンプリングと簡単な質的/量的分析
16:00- さまざまな応用例の紹介と実践

参考図書

ELAN入門(細馬宏通・菊地浩平編/ひつじ書房)

事前課題
持ち物

ELANをインストールしたノートパソコン。USBメモリスティック×1(データを受け渡す際に使うことがあります)。

グラウンデッド・セオリー・アプローチという研究法

趣旨

グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下GTA)は、相互作用によって変化するプロセスと構造を現象として把握することを目的とした研究法で、問いの立て方からデータ収集、データ分析、次に収集するデータのサンプリングまでの手順が体系立って作られています。質的研究において、いかにして概念を抽出し、現象を把握したのかを明示することは極めて重要ですが、GTAでは”データに根差した”具体的で段階的な分析によって、出来る限り研究者自身のバイアスを排除し、他者にも説明可能な分析を目指します。
今回のセミナーでは、演習として、実際にGTAの分析手法を用いてサンプルデータの分析を行うことで、データに根差した分析を行う方法とその重要性を学びます。分析手法としてだけではなく、一連の体系的な研究法として、GTAを理解する機会にしていただきたいと思います。

日時

2月23日(日)10:30ー16:00

講師

戈木クレイグヒル滋子(慶應義塾大学 看護医療学部教授)
・西名諒平(慶應義塾大学 看護医療学部助教)

タイムテーブル

10:30-12:00 講義1:GTAとその分析手順
12:00-13:00 ランチョン演習1:プロパティ・ディメンションの抽出とラベルづけ
13:00-13:30 ディスカッション1
13:30-14:00 講義2:カテゴリーのまとめ方とアクシャルコーディング
14:00-14:15 休憩
14:15-15:15 演習2:カテゴリーの作成とアクシャルコーディング
15:15-15:45 ディスカッション2
15:45-16:00 まとめ

参考図書

(A)戈木クレイグヒル滋子(編著),グラウンデッド・セオリー・アプローチ-分析ワーク
ブック第2版,日本看護協会出版会,2014
(B) 戈木クレイグヒル滋子(編著),グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いたデータ収集法,新曜社,2014
(C)戈木クレイグヒル滋子,グラウンデッド・セオリー・アプローチ 改訂版-理論を生み出すまで,新曜社,2016

事前課題

テキスト(A)の第1章から第3章を読んでくると演習の学びが深まります。