日┃本┃質┃的┃心┃理┃学┃会┃メ┃ル┃マ┃ガ┃2┃0┃1┃1┃
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編集:日本質的心理学会研究交流委員会
日本質的心理学会 メールマガジン No.78======================2011/4/20
余震が続き放射性物質が飛散するなかで書いています。自然は意図がなく
手加減してくれません。僕らは無力です。また、原子力エネルギーは人が見
つけ出し、原発は人が作ったものです。僕らは惨酷です。質的心理学は、人を
機能に分割するのではなく、全体としてとらえる野心的な学問だと思います。
僕らが無力で惨酷であることに質的心理学はどう応えるのか。切実な問いです。
▽▼ 目次 ▽▼━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ 学会より会員のみなさまへ
◆理事長からのメッセージ「私たちに、何ができるでしょうか?」
◆研究交流委員会より:「研究奨励制度」「研究企画助成制度」の募集
◆研究交流委員会企画の研究会
○子どもをみる行為をみつめなおす
◆『質的心理学研究』編集委員会より
◆『質的心理学フォーラム』編集委員会より
◆会務委員会より
■□■□会員からの情報コーナー
■ 研究会情報
◆第1次世界健康質的研究学術大会(ソウル)
テーマ:Understanding and Caring for the Human Being
■ 著書の紹介
なし
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◎ 学会より会員のみなさまへ
……………………………………………………………………………………………
◆理事長からのメッセージ「私たちに、何ができるでしょうか?」
2011年3月31日
日本質的心理学会 理事長
やまだようこ
私たちが1000年にいちど出会うかどうか、という大きな災害が東日本で起こり
ました。この未曾有の災害に出会って、ことばを失うばかりです。被災された
みなさんには、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。
かけがえのない人を失い、家や職場を失い、ふるさとの風景を失い、今も被災地
で不自由な暮らしをせざるをえない方々のお気持ちを想像するだけでも、胸がはり
さけそうです。しかし、津波で祖母を亡くした娘さんは、「(葬式など)何もでき
ないと思っていたので、遺体が見つかり、お経を読んでもらっただけで、ありがたい。
おばあちゃんの分まで生きるよ」と語っていました。自宅の2階が波にさらわれ、
1キロ離れた小学校の屋上で見つかった男性は、「災難だったが、布団やアルバムが
残っていただけでもありがたい」と話していました。
「ありがたい」、ふつうに何げなく使っていることばですが、今ここに生きていて、
日常のふつうの生活をしていること自体が、「有り難い」こと、感謝すべきことだった
と、改めて気づかされます。
ふるさとが一瞬にして津波に飲み込まれた光景を目に焼き付けたあと、夜中に一睡も
できないで非常階段の上にいた男性は、「空を見上げると、満天の星空が広がっていた。
電気が消えた被災地の空は、透き通るように澄み渡っていた。電気のない時代には、
こんな夜空を見ていたんでしょうかね。」そう言いながら、みんなで空を見上げたと
いいます。
そのようなことばを口にしながら、前向きに生きようとしている被災地の人々の姿は、
逆に私たちを励まし、共に生きていく力を生み出してくれます。悲劇のどん底からでも、
私たちは人間にとって何が大切なのか、どのように生きていくべきなのか、人間の強さ
についても弱さについても、たくさん学ぶことができるのです。
イギリスのインデペンデント新聞は、日の丸の赤い円の中に日本語で書いた「がんばれ、
日本。がんばれ、東北」を1面トップにしました。それを、イギリスの友人がいちはやく
知らせてくれました。これを作った記者は、悲惨な報道写真と励ましのことばと、どちら
を載せるべきか、最後まで迷い、社内でも反論が多かったということです。でも、その
決断のおかげで、私たちは、多くの友人がいることに気づきました。つい最近、韓国の
マンションにも「がんばれ 日本、の垂れ幕がかけてあるよ」と友人が知らせてくれま
した。
日本質的心理学会として、私たちは、被災者を支援するために、この未曾有の災害に
立ち向かうために、何ができるのでしょうか?この学会には、フィールド研究や実践研究
や当事者研究、語りやケアや教育や社会について研究する専門家が集まっています。
今こそ、私たち、質的研究者の力が、ほんとうに試されていると思われます。
私たちができること、私たちの得意分野は何でしょうか。たぶん、大規模な情報収集や
汎用的な知識の集約庫を刻々と提供する事業は、他のメディアや学会にまかせてもよい
かもしれません。
私たちがすべきこと、私たちの使命は何でしょうか。今回の災害は大規模で、長期戦
です。すぐさま行動に起こすべきことも多々ありますが、長期にわたって支援していく
地道な活動はもっと必要になるかもしれません。
今の時点では、あまり美しいことばを語れません。立派な決意表明もできません。
すでに現地で被災者支援に乗り出して奮闘している学会員もいます。しかし、まだ多く
の学会員は、ひとりひとりが、自分に問いかけたり、身近な人々と語りあったりしてい
るところかもしれません。遅くはありません。これからが長い道程になるでしょう。私
たちの力を集めて、学会としての具体的なアクションにむすびつけていきましょう。
日本質的心理学会では、被災者や支援者のみなさんの生活や人生の具体的な文脈を
大切にし、こころの核心にしっかりとどく、生きたことばや役立つ情報を提供していき
たいと思います。
日本質的心理学会では、被災を受けたみなさんのかたわらに寄り添い、支援活動や
心のケアに携わるみなさんを支援し、海外の友人たちに共感の輪を広げるために、みな
さんと共に真摯に歩んで行きたいと思っています。
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◆研究交流委員会より:「研究奨励制度」「研究企画助成制度」の募集
○「研究奨励制度」について2011年度分の募集を開始いたします。ふるって応募
ください。
「研究奨励制度」とは、大学院に在学中の方を対象に、国内外のフィールド調査
の費用や、学会への参加・発表費用などとして1名につき10万円を助成するとい
うものです(2件まで)。
継続的なフィールド調査を予定されている方や、国際学会への参加を検討されて
いる方におすすめします。2011年度分の〆切は2011年7月末です。9月から調査を
開始いただけるよう,8月末までに審査を終了します。
【申請の手続きとスケジュール】
申請時に大学院在学中であることが条件です。研究計画書および予算計画書の様
式を学会ホームページからダウンロードし、必要事項を記入して電子メールで担
当者まで送付してください。メールのタイトルは「質的心理学会 研究奨励制度
応募」としてください。
連絡事項:氏名、所属、連絡先(住所、電話、メール)
研究計画書:研究計画(研究課題名、目的、方法、予想される結果と意義:全体
で1,200字程度)
予算計画書:物品購入費、国内旅費、国外旅費、謝金、その他等、費目ごとに具
体的にご記入ください。
〆切:2011年7月末
なお、助成を受けた次の年度か、その次の年度の大会で発表すること、および
「質的心理学フォーラム」へ寄稿していただくことが条件です。申請の内容を実
現できなかったと判断される場合には、助成金の返還をお願いすることがありま
す。詳しい応募方法などは学会ホームページでご案内しています。応募およびお
問い合わせは以下までお願いします。
研究交流委員会 研究助成担当
梅崎高行:umezaki「あっと」konan-wu.ac.jp(「あっと」を@に変換してくださ
い)
○「研究企画助成制度」の応募要領
研究会・講習会などの企画を学会がサポートします。費用も最低5万円~最高10
万円を助成します(1~2件を採択します)。なお、今年度中に開催することが応
募条件です。9月から活動を開始いただけるよう,8月末までに審査を終了します。
テーマ例(企画の具体的な内容については、相談に応じます)
・理論について(エスノメソドロジー、活動理論、社会構築主義など)
・研究方法について(医療の会話分析、教室の相互行為分析など)
・特定のテーマについて(記憶、仕事場、介護、ひきこもりなど)
講師の紹介は学会がサポートし、広報についてもご協力します。なお、会場や、
必要な人員の確保、当日の運営は受け入れ側でお願いいたします。助成される費
用は、講師の謝礼、旅費、会場費、人件費、その他の実費です。
【応募の手続きとスケジュール】
研究計画書および予算計画書の様式を学会ホームページからダウンロードし、必
要事項を記入して電子メールで担当者まで送付してください。メールのタイトル
は「質的心理学会 研究企画助成制度 応募」としてください。
連絡事項:氏名、所属、連絡先(住所、電話、メール)
研究計画書:希望するテーマ、開催地のめど、開催時期など
予算計画書:物品購入費、国内旅費、国外旅費、謝金、その他等、費目ごとに具
体的にご記入ください。
〆切:2011年7月末
助成を受けた場合、時間的に十分な余裕をもって(原則的に1か月前には)、学
会ホームページおよびメールマガジンで開催内容の周知に努めてください。
また、助成を受けた次の年度に「質的心理学フォーラム」へ研究会実施報告文を
寄稿してください。
さらに、研究交流委員会宛にも所定の報告書及び領収書(原本)を提出いただき
ますのでご準備ください。余剰金については返還いただきますのでご注意くださ
い。
申請の内容を実現できなかったと判断される場合には、助成金の返還をお願いす
ることがあります。詳しい応募方法などは学会ホームページでご案内しています。
応募およびお問い合わせは以下までお願いします。
研究交流委員会 研究企画助成担当
藤江康彦(研究交流委員会 研究助成担当):fujie「あっと」kansai-u.ac.jp
(「あっと」を@に変えて下さい。)
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◆研究交流委員会企画の研究会
○子どもをみる行為をみつめなおす
【日時】2011年6月10日(金),16:00-18:00(開場15:50)
【場所】大阪府八尾市聖光幼稚園(同園の園内研修を兼ねます)
【費用】会員・現職保育者・養成校学生は無料,他の方は資料代として300円を
頂きます
【定員】最大20名(予定)
【お申込み・お問い合わせ】
梅崎までメールでお願いします。園への直接のお問い合わせはご遠慮下
さい。スペースの関係上,定員に達し次第申し込みは締め切らせていた
だきます。
umezaki@konan-wu.ac.jp(@を半角@に代えて送信下さい)
梅崎 高行(企画・司会)
保育者は保育の場で,子どもの何を,どのようにみているのだろうか。また,
みたことをどのように,保育実践に反映しようとしているのだろうか。
一方研究者は,子どもをどうみているのだろうか。研究者が採用するみかたは,
実践者の全体的なみかたと比べたときに,何を重視し,反対に何を捨象すること
を余儀なくされているのだろうか。そもそも研究者はこの点に自覚的だろうか。
また,そうしたみかたを選択した結果,どのような知見が保育の場に還元されて
いるのだろうか。
保育者にとって,保育の場で子どもをどうみるかは,その後の保育にかかわる
重要なプロセスである。保育者の観察は,各人のもつ保育観に基づき,経験によ
って洗練されると考えられる。以上の過程は研究者のみかたにも当てはまること
だが,本会では,こうした研究者のみかた(および所産としての知見)が,実践
者のみかたにとってどのような意味をもたらすものかという点について議論を行
う。ここでは仮想的に,実践者にとっての「みる」行為が,その日常性がゆえに
自明視されやすく,研究者の「みかた」は,実践者の「みかた」を揺さぶる視点
刺激的な位置にあると捉える。議論を通し,このような仮想(あるいは研究者の
期待)を現実のものとしていくための問題や諸条件について明らかにしたい。
以上の目的に向けて本会では,現場の保育者,定性的な観察法を採用する研究
者,定量的な観察法を採用する研究者の三者に登壇いただく。三者からの話題提
供を受けた後,質的・量的アプローチを併用した研究デザインによって,子ども
の社会性の発達を研究する指定討論者からコメントをいただく。この後,フロア
も交えたディスカッションを行うことによって,参加者相互の気づきに資するこ
とが期待される。登壇者4名および提供いただく話題は下記のとおりである。
登壇者:
林 和代 氏(聖光幼稚園)
林氏は,「保育の仲間づくり研究会」の会員園でもある幼稚園の園長である。
当研究会では「子どもを真ん中におく保育」を掲げ,月に一度の定例会や会員園
同士の公開保育,さらには海外研修などを通し,学びや情報交換を精力的に行っ
ている。2010年は「子どものみとり」をテーマに保育カンファレンスを重ね,中
でも聖光幼稚園では,質の高い意見交換が行われた。また,同幼稚園はオープン
なスタンスで,これまで多くの研究依頼を受け付けてきた。さらに氏自身は大学
院に所属する研究者として,幼児を対象とした研究を進めている。これらの活動
や実績を踏まえ,実践者の立場から子どもをみる行為について語っていただく。
野口 隆子 氏(十文字学園女子大学)
野口氏は,質的心理学会誌に掲載された『保育者の持つ”良い保育者”イメージに
関するビジュアルエスノグラフィー』の第一著者である。また「保育プロセスの質
」研究プロジェクトのメンバーであり,同プロジェクトが提示した映像を用いた保
育観察の視点は,子どものみとりを具体的に進める手順を示唆したものとして有用
である。「保育の仲間づくり研究会」が援用した子どものみとりの視点も,同プロ
ジェクトが整理した視点であった。定性的な観点から子どもをみる行為について語
っていただく。
松本 聡子 氏(お茶の水女子大学)
松本氏は,大規模・長期縦断的な手法を用いて子どもの発達プロセスを記述する
研究に取り組んでいる。とりわけ子どもが生活する環境(人的・物的)の影響に着
目し,子どもと環境の相互作用を分析することによって,子どもの発達を導く諸要
因の影響を同定している。個別具体的な子どもの育ちをいかにすくいとるのかとい
う縦断的な研究の課題に対しては,観察を併用し,得られた情報を量的に変換する
ことによって対応されている。定量的な観点から子どもをみる行為について語って
いただく。
酒井 厚 氏(山梨大学)
酒井氏も松本氏同様,長期縦断的な手法を用いて子どもの発達プロセスを明らか
にする研究に取り組んでいる。2010年からは,研究プロジェクト-PEERS
(Project of environmental effects of relationships and self)-を開始した。
PEERSは,子どもの社会性の諸側面のうち,関係性と自己の発達に焦点化し,長期
縦断的に1)他者への信頼感,2)自己受容感,3)向社会的行動および問題行動の
発現プロセスを明らかにしようとするものである。PEERSでは,量(質問紙)と質
(観察・実験)を併用した研究デザインが用いられ,フィールド(家庭や保育現場)
でのデータ収集も計画されている。このような活動を踏まえて話題提供者の話題に
コメントいただく。
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◆『質的心理学研究』編集委員会より
『質的心理学研究』第10号の発刊から1ヶ月が過ぎました。会員の皆様からご感
想をお聞きしたいところですが、やはり1ヶ月前に起こった東日本大震災という未
曾有の出来事を前に、研究どころではないと感じられた方も、もしかしたらいらっ
しゃるのではないかと想像します。まずは、このたびの震災によって被災された皆
さまに対して謹んでお見舞い申し上げたく思います。また、直接の被災がなくても、
じっとしていることができない不安や焦燥の日々をおくられている方々もいらっしゃ
るかもしれません。『質的心理学研究』としても、本誌として何ができるのか、さ
らには学会全体として何ができるのかを考えていかなければならない事態に直面し
ていると思います。会員の皆様からもご意見などありましたら、編集委員会事務局
宛のメールなどを通じて、なんなりとご意見をお寄せいただければありがたく思い
ます。
原子力発電所の事故処理の問題はまだまだ予断を許さないものの、首都圏の大学
では新学期の授業を開始したところもあり、不安をかかえながらももとの日常生活
への歩みが少しずつ始まっています。被災された方々を積極的に支援する活動を行
う重要性もさることながら、日常的な活動を粛々と行うことで支援の動きをその外
側から支えていくのも大事なことではないかと思います。編集委員会でも震災への
対応を考えつつも、予定されている第11号以降の編集作業を着実に進めていくつも
りです。
編集委員会の方では、年度が変わるのに伴って委員と監事の顔ぶれが少し変わりま
した。新たな編集委員として加わってくださることになったのは、山口智子先生
(日本福祉大学)、谷口明子先生(山梨大学)、森直久先生(札幌学院大学)です。
また、編集監事として、飯牟礼悦子先生(聖セシリア女子短期大学)、川島大輔先生
(北海道教育大学)が参加してくださいます。こうした新たな陣容で今後の編集作業
を進めることになりますが、会員の皆様にも、新たな論文の積極的なご投稿など、
いっそうのご支援とご助力をお願いしたく思います。
(編集委員長 能智正博)
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◆『質的心理学フォーラム』編集委員会より
1.第2号の東北地方配送について
東日本大震災に伴い、配送が遅れておりました東北6県につきましても、名取市、
仙台市若林区等への発送分(個別にメールでご相談差し上げます)を除き発送いたしま
した。それ以外の地域で『フォーラム』が届かない場合は、日本質的心理学会事務局
まで、ご一報ください。
2.意見論文を募集しています!
第2号の特集「物語りと共約幻想」に対する意見論文を募集しています。
(1) 原稿の分量:1,700 字以上3,600 字以内(手引きの書式1 ページ35 字× 32行で
約1.5 枚~3.2 枚)。
(2) 締切: 2011年6月30日(木)メール入稿必着
※詳細は、質的心理学フォーラム第2号116ページをご覧ください。
3.第3号緊急特集「質的心理学の東日本大震災」メルマガ連載第1回
『フォーラム』第3号で標記の緊急特集を掲載することとなりました。その予告、
および、会員の活動支援・情報共有のため、原稿の一部をメルマガで連載していき
ます。 (担当:八ッ塚一郎(特集幹事)・山田富秋)
☆—-企画にあたって
被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。未曾有の大災害にあたり、質的
心理学を標榜する私たちはなおのこと、科学の名を借りて調査を強行したり、人に語
りを強要したりすることのないよう、繊細な注意を払っていきたいと思います。
一方、「阪神」に始まる多くの経験を踏まえつつ、人々の苦難に寄り添い、ともに
生活を取り戻す道筋を歩もうとする活動が、複数の会員によってすでに始まっています。
そこで、フィールドに根差し、体験を決して量に還元させない姿勢で共通するさまざま
な支援の活動を、広く会員同士で共有する場を設けたいと私たちは考えました。そうし
た場のあること自体が、個々の活動に対する学会としての支援となり、被災地に貢献す
るための一助ともなるのではないかと考えたからです。
同時に、被災され困難な状況に向き合っておられる会員の声に耳を傾ける場を、何よ
り設けたいと考えました。もちろん、今はまだ、語ることそのものが痛苦である時期か
もしれません。しかし、会員の方々のうちに、聞き手を求める切実な声、いま発信して
おかなくては失われてしまう声があるなら、それに耳を傾けるための場を設けたいと思
います。それこそが、『質的心理学フォーラム』という媒体の使命でもあると考えるか
らです。第1回は矢守克也先生にご執筆いただきました。
☆—-「北から」 矢守克也(京都大学防災研究所)
後に「東日本大震災」と呼ばれる地震・津波の発生後、私は、仲間(渥美公秀氏、
永田素彦氏、八ッ塚一郎氏、いずれも本学会会員)とともに、青森に飛んだ。渥美氏が
理事長を務める「日本災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD)」の先遣隊として
である。
なぜ、青森か。阪神・淡路大震災をきっかけに立ち上がった団体として、また、中越
地震、四川大地震など、国内外の被災地で活動してきた団体として、次のような予感
があったからだ。「大きな支援は東京・仙台を拠点に南から入っている。きっと北に
行き届かない地域が残る。自分たちは北から南下、どこかで南からの仲間と出会えれ
ばいい」。これが、「北から」のベースである。
「北から」には、別の理由もあった。私たちが本拠を置く関西は、被災地からいか
にも遠い。遠くからの支援が、渦中にいる人びとにとって、この上ない喜びであると
同時に、時に言いようのない隔靴掻痒の感や摩擦を生むことを、NVNAD自身、これまで
何度も感じてきた。「被災地の周縁に、私たちと志を同じくする仲間がいるはず。その
方々と連携して進めないと被災地に迷惑をかける」。本学会会員の一人作道信介氏
(弘前大学)に連絡をとった。同氏の紹介で弘前、青森、八戸方面の多くの仲間と知り
合えた。現時点(2011年4月初め)では、彼らとともに、岩手県三陸沿岸の最北部に位置
する小さな村(野田村)への支援活動をお手伝いしている。
「北から」には、さらにもう一つ理由がある。遡ること16年前、阪神・淡路大震災の
後、八戸青年会議所が、NVNADの本拠地兵庫県西宮市の子どもたちを、八戸に迎えてくれ
た。西宮の子どもたちは、今回牙を剥いた太平洋で地引き網などを楽しんだ。その時の
お返しがしたい。その思いも、「北から」を支えている。NVNADのもう一つのキャッチ
フレーズで表現すれば、「被災地つながり」である。被災者にとって、(かつての)被災
者の支援は格別だからである。今回の訪問で、当時の青年会議所理事長(現商工会議所
メンバー)ともお目にかかれた。超広域災害であり、超長期災害である本災害では、
いずれ被災地の地元経済振興なども課題となってくる。たとえば、商工会の方と連携して
現地の農海産物などを阪神地域でプロモーションすれば、遠くにいても支援はできる。
実際、いくつかの災害でNVNADは、そうした活動にとり組んできた実績もある。
最後に。今は、研究などしている場合ではない。むろん、一般的にそうだというのでは
ない。被災地で被災者を対象にした研究という意味である。これは主義主張というより、
ごく素朴な事実認識である。しかし、私たちは研究者なのだから、研究者マインドを
もって支援活動にあたることは大切である。筆者自身は、「質的心理学研究」(第8号)
や第7回大会(茨城大学)で伊藤哲司氏とともにフィーチャーした「インター・ローカリ
ティ」を念頭において、支援活動にとり組んでいるつもりである。
その第8号に寄せた拙稿で用いたフレーズで本稿を締めくくりたい。
今こそ、Think practically,Act theoretically(実践的に考え、理論的にふるまおう)。
**********************************
◆会務委員会より
新年度になりました。4月15日現在の会員動向をお知らせいたします。
●会員数 : 986名
1000人を前に一進一退が続いてますが、今年度こそぜひ会員1000人台を達成したいです。
会費納入率は
●2010年会費納入率 : 68%
●2011年会費納入率 : 23%
です。みなさま、お手元の会費振り込み用紙をご確認ください。
なお、昨年度までの「事務局から」を「会務委員会から」にリニューアルしました。
皆様よろしくお願いします。
……………………………………………………………………………………………
■□■□会員からの情報コーナー<情報提供は、15日までにお願いします>
【注意!】以下の情報は原則として会員の皆さまから投稿された情報をそのま
ま掲載しております。したがって、掲載された研究会は必ずしも日
本質的心理学会と関連するものではありません。内容・条件等を各
自にてご判断の上、ご参加ください。
【注意!】情報提供は、こちらから連絡がとれるアドレスをご記入ください。
記事に関して、ご確認させていただく場合があります。
また、掲載情報は、簡潔に編集させていただくことがあります。
研究会などの情報は、直前の変更が、学会ホームページに掲載
されていることがありますので、出席される方は、開催直前に
HPで確認されることをお薦めします。
【情報!】メールマガジンの情報コーナーは、月刊のため情報が遅れることが
あります。そこで、できる限りホームページでも情報を提供します
ので、ホームページの定期チェックをお願いします。
……………………………………………………………………………………………
■ 研究会情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆第1次 世界健康質的研究学術大会
テーマ:Understanding and Caring for the Human Being
第1回世界健康質的研究学術大会が2011年 6月23日(木)~25日(土)まで
梨花女子大学で開催されます(組織委員長・辛瓊林教授)。メインテーマは
‘Understanding and Caring for the Human Being’です。
この件は、日本の広報を担当している YUN OKJONGさんから連絡をいただ
きました。
参加してみたい方、質問がある方は、Okjong Yun,RN,PhD.さんにメール
でコンタクトしてみてください。日本語okとのことです。
【期間】:2011年 6月 23日~25日
【場所】:梨花女子大学(組織委員長 辛瓊林 教授)
本学術大会は、25ヶ国以上が参加する行事として多学制的で学問的融合を
強調して交流しようとおもいます。また看護学、心理学、社会福祉学、哲学、
教育学、医学、人類学、相談学、体育学など質的研究が成り立つことができ
るすべての分野の研究者が自分の研究論文を発表して、関連学者たちと討論
することができる場になるだけでなく世界的に有名な質的研究者を仕えて主
題講演とワークショップであえる良い機会にもなるとおもいます。 学術大
会の登録及び abstract 提出 締切は3月31日です。多くの関心と参加をお願
い致します。詳しい情報は下のホームページを参照してください。
第1次 世界健康質的研究 組織委準備事務局
〒120-750 ソウル市西大門区大硯洞 11-1 梨花女子大学ヘレン館 305号
【公式 HP】 http://www.gcqhr.com
日本語 E-mail : yunokjong@yahoo.co.jp
(情報提供者 YUN OKJONG 様 推薦者 サトウタツヤ 様)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
■著書の紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
特にありません
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
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[クッピーより]
メルマガの担当者が一部交替しました。今年度よろしくお願いします。
深刻な被害にあい、依然避難生活を強いられている方々の心中は察するに
余りあります。程度は異なるとはいえ、誰しも気持ちが塞ぎこんでいる状態
だと想像します。何かささやかなことでも喜びを得てほしいと思います。
……………………………………………………………………………………………
編集:日本質的心理学会研究交流委員会
第78号担当:徳田治子・坂本將暢・松本光太郎
発行:日本質的心理学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jaqp/
発行日:2011年4月20日
●メールマガジンは、学会からの配信専用ですので返信できません。
●学会に関するご意見・ご要望は以下のWebページからお願いします。
【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
●メールマガジンに掲載する研究会等の情報やアイデアを募集しております。
情報提供・投稿は、各号15日までにお願いします。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jaqp/toiawase.html
(メールソフトによっては、改行されていることがあります)
●アドレスの変更、配信の停止を希望される場合は、お手数ですが学会事務局
までご連絡ください。
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- メールマガジン
- 日本質的心理学会 メールマガジン No.078