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編集:日本質的心理学会研究交流委員会

日本質的心理学会 メールマガジン No.51======================2009/1/20

明けましておめでとうございます。皆さま、2009年をどのように迎えられ
たでしょうか。クッピーは年の瀬だ、師走だと言ってあわただしくしてい
たと思ったら、いつのまにか新年を迎えてしまった感がなきにしもあらず
ですが…。何はともあれ、今年もクッピーとメルマガを、どうぞよろしく
お願い申し上げます。皆さまにとって、本年が良い年になりますようお祈
りしております。

▽▼ 目次 ▽▼━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◎ 学会より会員のみなさまへ:

◆研究交流委員会主催シンポジウムのご案内
「臨床の中の倫理―命の限りと向き合うとき」

◆事務局より

◆編集委員会より

■□■□「質的研究」情報コーナー

■ 研究会情報

○第4回てんむすフィールド研究会「心理学の軌範=行動主義とは別のあ
り方を考える」(名古屋大学)

○キャシー・シャーマズ氏講演会のご案内 「社会構成主義版グラウンデッ
ド・セオリー法の可能性と展望」(青山学院大学)

○よそおい・しぐさ研究会(YS研)第5回「心理臨床における美の問題」
(京都大学)

■ 著書の紹介
○『ナラティヴからコミュニケーションへ―リフレクティング・プロセス
の実践―』(矢原隆行・田代順編)

○『グラウンデッド・セオリーの構築: 社会構成主義からの挑戦』(キ
ャシー・シャーマズ著)

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◎ 学会より会員のみなさまへ
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◆研究交流委員会主催シンポジウムのご案内
「臨床の中の倫理―命の限りと向き合うとき」

◇企画趣旨
この世に受けた生に限りがあるということを知ると、たぶん自分の中で、
良い悪いの基準が大きく変わる気がする。自分の命であればもとより、自分
に近しい人の命のことであっても、しておきたいこと、しなくてはならない
ことを決める基準がいつもとは異なる気がする。どうしてなのだろうか。も
ともと命には限りがあり、永遠に生きることはできない。けれども、あると
ないとのはざまでないということを直視するときほど、ある(ない)という
ことの意味が際立ち、濃縮した時間が流れるように思われる。
がん看護ないしは医療の、特に終末期ケアの現場は、ある(ない)というこ
とが他人事であったり、ある(ない)ということをあまり意識していない、
いつもの時間や意味と、命の限りをまのあたりにした人のそれとが交錯する
現場といってもいいだろう。そのような現場の倫理的課題や判断について、
ケア実践者、哲学者、社会学者の立場からお話していただき、質的研究から
どう終末期の倫理的課題や判断に取り組むことができるのか、あるいは取り
組もうとするときにどのような倫理的課題があるのかについてご討議いただ
く予定である。

◇開催日時 2009年3月11日(水) 14:00~17:15
(受付は13:30から)

◇開催場所 大阪大学中ノ島センター 10Fホール

◇登壇者
話題提供者
田村恵子(淀川キリスト教病院 ホスピス主任看護課長/がん看護
専門看護師)
鷲田清一(国立大学法人大阪大学 総長)
鈴木智之(法政大学社会学部 教授)
指定討論者
山田富秋(松山大学人文学部社会学科 教授)
司会
大久保功子(国立大学法人東京医科歯科大学大学院保健衛生研究科
教授)
操華子(国際医療福祉大学小田原保健医療学部 教授)

◇会費
会員   500円
非会員 1500円

◇申込方法
下記のURLからお申し込みください。
http://wwwsoc.nii.ac.jp//cgi-bin/jaqp/yomi-mailer/y_mail.cgi?id=moushikomi

◆事務局より
あけましておめでとうございます。
学会もすでに5年目を迎えており、4月からは、第二期執行部の最後の年
度(3年目)に突入いたします。北海道での学会、新しい学術誌の創刊、な
ど、ますますパワーアップする年になるという予感です。
会員のみなさまにおかれましても、一層の活躍の年となることを祈念して
います。

◆編集委員会より
新しい年を迎えましたが、トヨタやソニーの赤字転落が大きく報道され、
世界同時大不況はかなり深刻なまま長引くと予想されています。それだけで
なくきな臭い雰囲気もあります。ガザ地区ではようやく停戦になりましたが、
まだ先行きに明るいものはまったく見えてきません(1月19日現在)。憎しみ
の連鎖には終わりはありません。人類はいつも内部(国内)の矛盾をもみ消
すために、戦争をし続けてきたようにも思います。
21世紀がどのようになっていくのかまったく先が見えないように感じられ
る今日、明るいニュースに感じられたのが、向谷地生良氏の「『べてるの家』
から吹く風」(いのちのことば社)でした。約3年前に出版された本なので
すが、昨日読了したので個人的にはニュースというわけです。この書物では、
統合失調症の人たちが自分たちの「爆発」や「幻聴」とどのようにつきあっ
ていったのかがユーモラスに描かれています。必要なことは「闘う」ことや
「がんばる」ことではなく、「あきらめる」ことや、「絶望する」ことだそ
うです。「べてるの家」では「爆発した当事者」が自分たちの「爆発」を研
究し、そこから「爆発救助隊」という他者援助が生まれています。また「幻
聴研究班」からは、「幻聴さんに根気よく話しかけ、幻聴さんに『お引き取
りを』お願いする」などの高度な技法が開発されています。まさに先端的ア
クションリサーチです。
この書物を読んで、私は「21世紀の質的心理学は『べてるの家』をモデル
とする当事者研究だ」と膝を打ちました。ところが、同時に「それはおまえ
の短絡的妄想にすぎない」と「幻聴さん」が耳元でささやき始めたのです。
大切なのは、互いの「幻聴さん」を承認し合うことだといいます。今日の社
会において「質的心理学」に何ができるのか、「あきらめ」「絶望しつつ」、
お互いの「幻聴さん」を承認し合って、ユニークな自己援助や他者援助がた
くさん生まれてくることを今年の初夢としたいと思います。
(編集委員長 麻生武)

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■□■□「質的研究」情報コーナー<情報提供は、15日までにお願いします>
□■□

【注意!】情報提供は、こちらから連絡がとれるアドレスをご記入ください。
記事に関して、ご確認させていただく場合があります。
また、掲載情報は、簡潔に編集させていただくことがあります。
研究会などの情報は、直前の変更が、学会ホームページに掲載
されていることがありますので、出席される方は、開催直前に
HPで確認されることをお薦めします。
【情報!】メールマガジンの情報コーナーは、月刊のため情報が遅れることが
あります。そこで、できる限りホームページでも情報を提供します
ので、ホームページの定期チェックをお願いします。
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■ 研究会情報    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

○第4回てんむすフィールド研究会「心理学の軌範=行動主義とは別のあり方
を考える」

◆企画主旨
J.B.ワトソンが1958年に亡くなってから半世紀が経過した。その間に心理学
徒が意識することのないほどに、行動主義は心理学の規範として深く浸透して
いるように思える。認知科学やナラティヴ研究のように、行動主義に対して批
判的な立場をとり距離を置いたかにみえる領域さえも依然その勢力の範疇にあ
るのが実際である。行動主義の影響を意識することもなく、行動主義の影響の
及ばない心理学を想像する力をさえも失うことで、我々の思考から自由度は奪
われ、それ以外の心理学の姿を忘却させられているといえるだろう。これは心
理学の多様性の保持や、オルタナティヴの創造を考える上で無視できない問題
である。そこで、本企画では、行動主義とは異なる心理学の可能性について検
討する。具体的には、一つに行動主義が浸透する前の心理学の状況を検討し、
何が失われたのかを吟味する。二つ目に現在の行動主義の影響を整理し、行動
主義とは異なる心理学の可能性について議論する。

◆日時:2009年2月1日(日)13:15~17:00

◆場所:名古屋大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)
3階ミーティングルーム
http://www.nagoya-u.ac.jp/camp/map_higashiyama/higashiyama_west.html
の51番の建物です。

◆話題提供者(順不同)
サトウタツヤ(立命館大学)
渡邊芳之(帯広畜産大学)
松本光太郎(名古屋大学)
コメンテータ
戸田山和久(名古屋大学)
司会
荒川歩(名古屋大学)

◆参加申込み
参加費500円
資料準備の都合上、事前にご連絡いただければ幸いです。
荒川歩 a.arakawa@law.nagoya-u.ac.jp(@を半角にして下さい)

てんむすフィールド研究会のURL(最新情報はこちらでご確認下さい)
http://www.k2.dion.ne.jp/~kokoro/tenmus/
(情報提供者 荒川歩様)

○キャシー・シャーマズ氏講演会のご案内
「社会構成主義版グラウンデッド・セオリー法の可能性と展望」

◆企画趣旨
『グラウンデッド・セオリーの構築:社会構成主義からの挑戦』(Construct-
ing Grounded Theory: A Practical Guide through Qualitative Analysis)
の著者キャシー・シャーマズ氏(Kathy Charmaz)が3月に青山学院大学におい
て講演を行います。講演会終了後には懇親会も予定されております。
直接ご本人とお話しをする機会にもなりますので、関心のある方は奮ってご
参加ください。なお、申し込みは先着100名に達し次第締め切らせていただき
ますのでご了承下さい。

【一般講演会】
◆日 時: 2009年3月14日(土) 15:00 — 17:00
◆場 所: 東京都渋谷区渋谷4-4-25 青山学院大学 総研ビル11階
第19会議室
◆参加費:無料
* 通訳は付きません。
* 17:30より懇親会があります。(¥2,000)
交通アクセス: http://www.aoyama.ac.jp/other/access/aoyama.html
キャンパスマップ: http://www.aoyama.ac.jp/other/map/aoyama.html
◆申し込み
下記のURLから申し込み登録を行ってください。
http://blog.sipec-square.net/godoken/2009/01/post_110.html

【講演者】
キャシー・シャーマズ博士(Kathy Charmaz, Ph.D.)
米国カリフォルニア州立大学ソノマ校社会学科
(Department of Sociology, Sonoma State University)

【企画】
青山学院大学国際政治経済学部国際コミュニケーション学科 末田清子・抱
井尚子
【主催】
青山学院大学国際政治経済学部国際コミュニケーション学科
(情報提供者 抱井尚子様)

○よそおい・しぐさ研究会(YS研)第5回「心理臨床における美の問題」

◆話す人 東畑開人(京都大学教育学研究科)
◆企画趣旨
昨今心理学領域では美的なものに関わる関心が高まっている。心理臨床領
域でもまた、美を軽視する姿勢にあったFreud,Jungの心理学から、Kohut,
Hillmanという現代の心理学への以降の中で美に対する関心が高まっている。
このような美への関心の高まりは、摂食障害や醜形恐怖などの自己愛人格障
害を基礎とする一連のパーソナリティを持った患者の増加と関わっていると
考えられる。そのため、美に関心を向ける視点のありようについて発表した
い。本発表を通じて耽美主義やファッション・外見へのこだわりとは、いか
なる主体のありようを基礎とするものであるのかを、心理臨床の理論におけ
る視点のありようを検討することを通して明らかにしたい。
◆日時 2009年3月7日(土) 16:30-18:00
◆会場 京都大学 教育学棟(詳細未定)
◆お問い合わせ先 鈴木公啓(研究会幹事)
suzukirt_@nifty.com (@を半角に変えて下さい)
◆参加費 参加費は無料です。なお,参加の場合は、資料作成の都合上、
事前にご連絡いただけると助かります。
◆研究会URL http://homepage3.nifty.com/suzukirt/ys.html
(情報提供者 荒川歩様)

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■著書の紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

○『ナラティヴからコミュニケーションへ―リフレクティング・プロセスの
実践―』(弘文堂)
矢原隆行・田代順編

昨年,9月に上記の本を編者として編んだ。ナラティヴやコミュニケーショ
ン研究など,それらへの質的研究ともリンクする部分が多々あると思われ,
ここに紹介したい。社会学者,社会福祉学者,臨床心理学者の3分野の研究
者が協働して著した,もともと家族療法の技法であった「リフレクティング
・プロセス」(とその応用)をめぐっての論集である。
内容は,論者らの専門とそれへの応用実践を最大限に活用したものとなっ
た。具体的な内容を概観すると,ルーマンのセラピー観とつなぎつつ,コミ
ュニケーションのシステムとしての在り方を論じ,それが臨床社会学の「実
践」へどのようにつながっていくかを論じたもの,心理臨床や福祉関係に携
わる専門家教育おける研修への応用実践,「いじめ」への予防的介入として
の学校コミュニティへのアプローチや精神障害者家族への心理教育としての
応用実践などを論じた。
先述したように,リフレクティング・プロセスは,家族療法の技法から出
立したものであるが,その応用実践の範囲と効果の高さは,かなり広いこと
が実感できる論集となった。ご一読を勧めたい。
(情報提供者 田代順様)

○『グラウンデッド・セオリーの構築: 社会構成主義からの挑戦』(ナカ
ニシヤ出版)
キャシー・シャーマズ(著)、抱井尚子・末田清子(監訳)
2008年11月発刊 税込定価 3045円

「データに根ざした理論」の生成を目指すグラウンデッド・セオリー法が
提案されたのは、今から約40年前である。その後のポストモダニズムからの
問題提起を受ける形で、近年、社会構成主義の視点からグラウンデッド・セ
オリー法を再検討する動きが出てきている。本書は、その中心的存在である
Kathy Charmazが世に送りだした、”Constructing Grounded Theory: A Pra-
ctical Guide Through Qualitative Analysis” (2006年, Sage London)の
全訳である。著者はまず、データやそれらを取り囲むフィールドに根ざした
理論とはどうあるべきか、という根源的な問いから始め、そこから新しいグ
ランデッド・セオリー法を組み立てていく。そして、データやフィールドの
声に真摯に耳を傾け、それらを忠実に再現するための新しい手法が、具体的
な例示を用いて明快に語られる。従って本書は、初学者から豊富な調査経験
を持つ質的研究者に至るまでの幅広い読者層が持つ、根源的な問いや研究実
践上の具体的な疑問に応え得る、稀有の一冊であると言えるだろう。

<目次>
序文
1 グラウンデッド・セオリーへの誘い
2 濃密なデータの収集
3 グラウンデッド・セオリーの実践におけるコード化
4 メモ書き
5 理論的サンプリング・飽和・分類
6 グラウンデッド・セオリー研究における理論の再構築
7 草稿の執筆
8 研究過程を振り返る

http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=503
(情報提供者 抱井尚子様)

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[クッピーより]
1月号から盛り沢山の内容でお送りしましたが、第51号はいかがでしたでし
ょうか。本年も読みやすい形で、皆さまに役立つ情報をお届けすべく、いろい
ろ工夫を重ねてまいりたいと思います。皆さまからのご意見を編集者一同お待
ちしております。どしどしアイデアをお寄せください。

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編集:日本質的心理学会研究交流委員会
第51号担当:大倉得史・野坂祐子・荒川歩
発行:日本質的心理学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jaqp/
発行日:2009年1月20日
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【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
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