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編集:日本質的心理学会研究交流委員会

日本質的心理学会 メールマガジン No10======================2005/5/21

クッピーです。サツキが咲き乱れていますが、気がつくとツツジが咲き
始めています。季節の変わり目に、風邪をひきやすいので、今年も注意
しなきゃと思っています。皆さまは、いかがでしょうか?

それと、今回「風」のコーナーで紹介のあった、館野泉さんの演奏活動が、
22日午後2時からTBS系で「奇跡のピアニスト」として放送されるようです。
タイムリーな話題で、クッピーもびっくりです。

▽▼ 目次 ▽▼━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●風に聞く・風を追う:「風のしるし」という作品から
●学会より会員のみなさまへ:<事務連絡・各委員会報告>
○第7号特集「バフチンの対話理論と質的研究」
○第2回大会準備委員会からのお知らせ
など
●「質的研究」情報コーナー:
投稿の呼びかけ・投稿要領・研究会の紹介・著書の紹介

5月28日開催! 理論心理学・心理学の哲学・合同研究会(第7回)

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風に聞く・風を追う:「風のしるし」という作品から
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☆☆☆   佐藤公治  (北海道大学大学院教育学研究科)  ☆☆☆

「風に聞く、風を追う」というコーナー名から私が連想した一枚のCDが
あります。「風のしるし」というタイトルで館野泉のピアノ演奏が納められ
ているものです。このCDの副題には「左手のためのピアノ作品集」という
タイトルもつけられています。館野さんは北欧のフィンランドを活動の拠点
にして幅広く活躍している人で知られていますが、2002年の1月の演奏
会で脳溢血で倒れ、一命は取り留めたものの、ピアニストとしては致命的と
言ってよい右手の麻痺が残ってしまうという大変な試練を受けてしまいます。
その後左手で引く作品がいくつかあることを息子でヴァイオリニストのヤンネ
さんから知らされ、再起を果たされているのですが、その演奏を納めたものが
このCDという訳です。
いささか長々とした紹介になってしまっていますが、「風のしるし」はこ
ちらも日本を代表する作曲家の間宮芳生さんが館野さんに献呈した作品です。
ここでの風はアメリカ先住民族ナヴァホの神話で出てくる風の神のことで、
地上の生を作りだしたのはまさにこの風の神であり、人の中にもこの風が吹
き続けているという訳です。館野さんのCDの演奏はとても左手だけで引い
たとは思えないほど表情豊かに、まさに聴く者の体の中に吹き続ける風を感
じさせてくれるものです。館野さんはむしろ左手であるからこそ豊かな世界
を表現できることに気付かされたと言います。
私たちは「風」をどのようにとらえ、表現したらよいでしょうか?たくさ
んの表現手段を手に入れることだけでそれは可能なのだろうか?むしろ、
素朴に、表現する手段が限定されたときにこそ、本質をみることができるの
ではないだろうか、そのようなことを反省的に考えたりします。実践の現場
では私たちにフィールドの風を感じ、それを自分の身体の中に吹く風として
捉えることを求めてきます。あるいはその風を表現していく時にはその人の
思想が否応なしに出てきてしまいます。逆に思想のないフィールド研究ほど
空しいものはないとも言えます。フィールドとの対話やそこでの思索なしの
「お話し」は空しいのです。風を感じようとする風土も大事かもしれません。
館野さんという大きな芸術家を生んだフィンランドという地についても思い
巡らしたりします。私は北海道とも気候が似たフィンランドが好きです。
それは気候だけでなくまさに人が織りなす風土なのでしょう。あるいは風を
感じるためには年齢や時間も大切かも知れません。フィールド研究、質的研
究を豊かにするためには時間とそこでゆっくり流れる風を大切にしていきた
いものです。

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学会より会員のみなさまへ
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◆◆◆事務局より

今年度の学会費の納入はお済みでしょうか?

2005年5月12日現在の会費納入率は48%です。
みなさまよろしくお願いします。

振込み口座は下記となっております。

口座記号番号  00190-7-278471
加入者名 日本質的心理学会事務局

◆◆◆編集委員会からのお知らせ

編集委員会より

よい季節となりました。会員の皆様はいかがおすごしでしょうか。
3月末に締め切りました第5号特集「臨床と福祉の実践」には予想以上
の数の投稿がありました。力作をお寄せくださった皆様どうもありがとう
ございました。現在、審査が進行中で、結果は追ってお知らせすることに
なると思います。また、一般論文締め切りが5月末に迫っておりますので、
準備されている方は、締め切りに遅れないように投稿してくださいますよ
うお願いします。

さて、4月中旬に編集会議が開かれ今後の方針などが話し合われたので
すが、その際に決まったことから、3件ほど会員の皆様にお知らせがあり
ます。

1)規約の一部変更
既にホームページには掲載しておりますが、投稿の際に参照していただく
規約の一部が変更となりました。もっとも重要な変更は、制限枚数が、
「表題・著者名・要約・アブストラクト・引用文献を除き400字詰め原稿用
紙で8枚から80枚まで」になった点です。ただしこれは2005年6月1日施行
ですので、第5号の原稿については、従来の規定が適用されます。詳細は、
学会ホームページ( http://quality.kinjo-u.ac.jp/ )をご覧ください。

2)第6号特集責任編集者の追加
既にお知らせしておりますように、第6号の特集は「養育・保育・教育の
実践」ですが、秋田喜代美先生(東京大学)に加えて無藤隆先生(白梅学園
大学)が責任編集者になりました。なお、特集の内容紹介は以前このメルマ
ガでもご紹介しましたし、また、「質的心理学研究」第4号の巻末や学会ホ
ームページにも記載されておりますので、そちらをご覧ください。締め切り
は2006年3月末です。

3)第7号特集の決定
同じ会議において、第7号の特集が、「バフチンの対話理論と質的研究」
に決まりました。責任編集は、茂呂雄二先生(筑波大学)とやまだようこ先
生(京都大学)です。内容の詳細は、やはり学会ホームページに掲載されて
おりますのでそちらをご覧ください。原稿締め切りは2007年3月末が予定さ
れています。関心のある方は、準備の方をよろしくお願いします。

(副編集委員長 能智正博)

「質的心理学研究」 第7号特集「バフチンの対話理論と質的研究」

責任担当  茂呂雄二・やまだようこ
特集投稿締め切り 2007年3月末

質的研究をさらに先に進めようとするものにとって、ミハイル・バフチン
の対話理論は、尽きることのないアイディアの源泉となる。バフチンの用意
した概念は、質的な思考を展開するための跳躍板ともなるだろう。そればか
りか、バフチンの返答が論争相手との間に構成する相互関係は、それぞれの
質的研究者が自分の立脚点を見極めるための方位測定グリッドとしても機能
するだろう。
バフチンのテクストからは、さまざまの質的概念を取り出すこともできる
だろうし、質的研究がたえず振り返るべき根本的なプロブレマティークも提
供される。たとえば法則定立的研究や論理実証主義へのアルタナティブを指
向する質的研究にとって、行為の一回性あるいは出来事性は、第一級の問題
ともいえる。たとえばバフチン初期の、行為の哲学や応答責任論は、出来事
への参与として心を理解する視座を提供するだろう。
多くの質的研究は、談話行為や会話過程など、日常実践としての言語を直
接の記述対象とすることが多いから、バフチンの言語論に関する作品群は、
この実践としての言語を解剖するためのさまざまの概念的道具を提供する。
特に対話的声の概念は、私たちの日常の談話実践をテクストそしてインター
テクストとして理解することを可能にする。
文化理論としてのバフチンのカーニバル論やポリフォニー論も、アイディア
の宝庫であり、他者性や多様性を存在の前提とせざるを得ない、類的人間と
しての私たちの実存が浮かび上がる。異質で多様な声のプールから立ち上がる、
その人らしさあるいはその人であること(リーチノスチ)は、主体や主体の
アイデンティティーには回収できない豊かさを示すだろう。
質的研究の方法論としてバフチンを読み直すことも可能であろう。あるいは
バフチンのアイディアを、さまざまな文化領域に適用して、文化のテクストが
織りなす複雑さを取りだすことも可能だろう。さらに切口を変えて、バフチン
の参与の倫理性から、介入的な質的研究の意味や方法論を構想できるように
思える。
現在バフチンの理解は、ある種の爛熟を見せている。初期の翻訳や咀嚼の
段階を経て、「バフチン産業」とも揶揄された一時のブームを越えた段階に
あって、人文社会科学のさまざまなセクターが、バフチンの独自の理解に
取り組むようになっている。一方で宗教哲学あるいはロシアの土着的な文化に
バフチンを回収しようとする動きがあり、他方イギリスの文化研究に代表され
るようにマルクス主義の伝統に沿った解釈に極化するというように、一見する
と散乱した印象も与えるほど多様な読解が示されている。質的研究という、
生活世界の具体的な問題を取り上げる、経験的な研究が、バフチンを読むこと
で、バフチン研究そのものをさらに前進させる契機となることも期待できる。
この特集では、多様なバフチン理解と、バフチン概念の適用の事例を集合
して、質的研究のさらなる深化をめざしたい。そして、質的研究とバフチン
のアイディアのさまざまの斬り結びの場を演出してみたい。

◆◆◆大会実行委員会より (実行委員長)

第2回大会準備委員会からのお知らせ

9月8日(木)・9日(金)(於東京大学)に開催される第2回大会の予約参加
申し込みを、6月1日(水)~30日(木)の間、受け付けます。
詳しくは、5月下旬に郵送予定の、大会案内をご覧下さい。
申し込み方法の詳細は、大会ホームページ
( http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~kakita/shitsuteki2.html )
からもご覧いただけます(5月下旬に掲載される予定です)。

 

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■□■□「質的研究」情報コーナー<情報提供は、15日までにお願いします>
□■□
【注目!】各種研究会の研究交流委員会共催(または後援)の要件についてを
HPに掲載しましたので、ご参照頂きたくお願いします。
http://quality.kinjo-u.ac.jp/kyousai-youken.html
【情報!】メールマガジンの情報コーナーは、月刊のため情報が遅れることが
あります。そこで、できる限りホームページでも情報を提供します
ので、ホームページの定期チェックをお願いします。
*会員限定ページは,「ユーザー名 member パスワード q-kaiin」
で,閲覧可能です。総会資料,メルマガのバックナンバー等を
読むことができます。
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■ 研究会の紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

■理論心理学・心理学の哲学・合同研究会(第7回)

日時:2005年5月28日(土曜)の午後2時から6時。
会場:明治大学駿河台研究棟2階第8会議室(TEL 03-3296-4033)。
JRお茶の水駅から神保町に向かって坂を下りると、
右手に23階建ての高層校舎リバティタワーがあります。
その裏手の10階建ての建物が研究棟です。

これは、と思う文献を担当報告者が紹介し、議論する形式です。

報告者からのコメント
1.渡辺 恒夫氏(東邦大学理学部)
自著論文「想起された独我論的な体験とファンタジーの3次元構造
:独我論の心理学研究へ向けて」(渡辺恒夫・金沢創,『質的心理
学研究』 4,115-135,2005.)を発表する。著者ら自身の個人的体験
から出発し、幾つかの偶発的事例との邂逅を通じ、大学生からの
組織的なテキスト事例収集にいたった。独我論的体験と判定された
60事例を、3名の判定チームにより、「他者への疑い/世界への
疑い」、「俯瞰する/俯瞰される」、「哲学的/ファンタジー的」、
という3次元で分類し、継承可能な構造モデルを作り上げた。
以上の手続きは、個人的例外的体験、共通了解性のある心理学研究
へと持ち込むための、枠組みとしても有効と思われる。間主観性は
けっして、先験的かつ自明な前提などではない。間主観性の破れに
対応する心的現実が、児童期を中心として約100人に5人の割合で
体験されることが、示唆されたと考えられる。

2.五十嵐 靖博氏(山野美容芸術短期大学美容保健学科)
Steven Mithen(レディング大学,イギリス)の論文
‘Human evolution and the cognitive basis of science’を紹介
します(The Cognitive basis of science, Carruthers,P.,
Stitch,S.& Siegal,M.(Eds.),Cambridge University Press,2002,
に収録)。「心の先史時代」(松浦俊輔・牧野美佐緒訳,青土社,
1998)の邦訳書で知られる著者は、この論文でアウストラロピテクス
からホモ・サピエンスにいたる人類の科学的思考の発達を、
進化論的視点から理解しようと試みます。
(これまでの活動については、理論心理学・心理学の哲学・
合同研究会ホームページ http://www.kisc.meiji.ac.jp/~rishin/
をご覧下さい。)
情報提供 五十嵐靖博(山野美容芸術短期大学)

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■ 著書の紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

『構造構成主義とは何か――次世代人間科学の原理』
西條剛央 (著),
価格: ¥2,940 (税込)単行本: 251 p
出版社: 北大路書房 ; ISBN: 4762824275; (2005/04)

「構造構成主義」とは,異領域の研究者が建設的コラボレーションを行う
ための建設的ツールとなる新たな「メタ理論」であり,「原理」であり,
「認識論」です。哲学的な原理から,科学論的基盤,そして人間科学の
新たな方法論まで含めて包括的に体系化されています。
また,そうした抽象的な議論に留まらず,11章では,構造構成主義の
継承可能性と応用実践の議論を行っています。具体的には構造構成主義
を,「質的研究法」「心理統計学」「発達研究法」「知覚研究法」
「人間科学的医学」「QOL評価法」「古武術(身体技法)」といった
多様な領域に導入し,新たな枠組みを提示した上で,その特徴を概説
しております(なお『質的心理学研究』にも構造構成主義の関連論文が
数本掲載されております)。
上記のように,構造構成主義は「原理」であるため,分野を問わず
あらゆる領域に導入可能となっております。そして新たな理論を創る
「理論作成ツール」でもあります。みなさんにも,構造構成主義を
活用して,当該領域に建設的コラボレーションや創造的研究をもたらす
新たな理論を「創造」していただければこれに勝る喜びはありません。

【目次】
構造構成主義のテーマ曲 Mr.Children『掌』
出版に寄せて 池田清彦
はじめに
1章  人間科学の「呪」
2章  人間科学の「呪」の解き方
3章  哲学的解明ツールとしての現象学的思考法
――判断中止と還元
4章  中核原理の定式化――関心相関性
5章  「言葉」を相対化する思考法
――ソシュール言語学と記号論的還元
6章  人間科学の科学論の確立――構造主義科学論
7章  構造概念の定式化――構造存在論を通して
8章  人間科学の方法論の整備
9章  他の思潮との差異化――構造主義,社会的構築主義,
客観主義,そして構成主義
10章 構造構成主義――全体像と思想的態度
11章 構造構成主義の継承実践
引用文献
あとがき
(情報提供:西條剛央)
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[クッピーより]

第10号はいかがでしたか?第10号と、区切りの番号でしたが、
やっと編集作業も、ルーチン化してきた感じです。
しかし、そうなると間違いが多くなる時期でもあります。もし、
お気づきの点がありましたら、ぜひ、気軽に教えていただけると
幸いです。

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編集:日本質的心理学会研究交流委員会
第10号担当:長谷川元洋・本山方子・湯浅秀道
発行:日本質的心理学会 http://quality.kinjo-u.ac.jp/
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●学会に関するご意見・ご要望は以下のWebページからお願いします。
【学会事務局アドレス jaqp@shiraume.ac.jp 】
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情報提供・投稿の締切は、各号15日までにお願いします。
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