締切: 2022年10月末日(厳守)→※2022年11月末日に締切延長→(受付終了)

特集趣旨

「産学官連携」の名のもと、大学の知を社会へと還元することが求められるようになって久しい。2003年時点でまとめられた文部科学省科学技術・学術審議会による解説では、産学官連携の重要性について、産業界・学術界双方の事情を以下のように整理している。第一に、産業界においては、国際的な競争激化・開発迅速化を背景とし、研究開発・人材育成の委託先として大学・公的機関を捉え始めていること。第二に、大学・研究者側としても、社会問題の解決に従事することが要求される中、産学官連携の事業に関わることが、学生がより広い視野を持つなど教育上の大きなメリットに繋がるとともに、研究の新たな可能性を生み出すと期待される。
こうした関心の高まりを背景とし、第23号特集においては、「産・学・官連携による/についての質的研究」と題し、論文を募集する。要点は以下の通りである。

  • 産学官の文言が “・” で区切られているのは、その組み合わせを問わないことを意味している。つまり、「産学官」、「産学」、「産官」、「学官」のいずれも受け付ける。
  • 産・学・官連携「による」質的研究とは、これら三者あるいは二者が連携した質的研究を指す。たとえば、「産(製薬企業)・学(医療系大学)・官(保健所)が協同し、地域の生活習慣病改善を目的とした、医療・保健ニーズのインタビュー調査を行う」というテーマが該当する。この例では「産・学・官」三者の連携を想定しているが、あくまで例であり、前述のように、「産・学」、「産・官」、「学・官」などの二者関係に注目したテーマも許容される。
  • 産・学・官連携「についての」質的研究とは、連携過程そのものや協同関係の構造に着目した質的研究を指す。たとえば、「産(製薬企業)・学(医療系大学)・官(保健所)が協同事業を実施していく過程において、どのように共通の目標を設定し、集団としての機能を果たすようになっていったか」というテーマが該当する。
  • 質的データを用いた研究だけでなく、産学官連携と関連した、社会・地域貢献や組織・集団に関する理論的検討なども許容される。

本特集においては、研究論文を募るものとし、実践報告は求めない。また、産・学・官連携「による」質的研究については、産学官の連携体制があったからこそ可能となったテーマや分析視角、あるいは成果を明確に提示することが望ましい。臨床(心理)、経営、法と心理、科学技術社会論(科学コミュニケーション)、医療・保健、地域研究など、様々な分野からの投稿を期待したい。