病院で生まれ、保育園や幼稚園に通い、学校に行き…、人はその生きていく道程において、数多くの場に遭遇し、そこにとどまり、通り抜けていったりします。そしてそこには、それぞれに保育、教育、医療、福祉、心理、看護学など異なる領域に出自を持ち、固有の養成プロセスを経て専門家になった人たちが居て、それぞれのまなざしと方法をもって人が生きていくことを支援しようとしています。

今回お招きするのは、保育の現場や心理臨床の現場から人の生と支援について思索を深めてこられた大倉得史先生と看護学における現象学からの質的研究アプローチの第一人者である西村ユミ先生です。大倉先生は、二者が語り合う中で見えるようになってくるその人の在り方を問い(『拡散 diffusion―「アイデンティティ」をめぐり、僕達は今』(2002年)、また関係のなかでの育ちゆく主体について問う(『育てる者への発達心理学ー関係発達論入門』(2011))と共に、「体験に寄り添う知」を追求してこられました。西村先生はご著書「語りかける身体-看護ケアの現象学-」(2001年)で遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」と呼ばれてきた)患者と看護師のはっきりとは見てとれない交流を、メルロ=ポンティの「身体論」を手がかりに、看護師と研究者の対話をもとに記述し開示することを目指されました。そしてその結びに看護実践の現象学の向かうところを、メルロ=ポンティの言葉を引いて「世界を見ることを学び直す」として展望されました。

あらためて本書出版後の20年を経て、それぞれの臨床実践の探求において問われてくる「世界」とは何か、「世界を見る」とはどういうことなのか、そもそも「世界を見ることを学び直す」ことの必要性とは何かをお尋ねしたいと思います。これらの問いかけを通じて、私たちが生きている状況において専門性が求められる現場と、そこを持ち場とする専門家について考え合う場を持ち、多くの現場、多くの学問領域の「交流」の契機としたいと思います。

さまざまな学問領域の方々の多くのご参加をお待ちしております。

日程

2022年3月26日(土)10:00~12:00

開催方法

Zoomを用いたオンライン形式

登壇者

話者:西村ユミ(東京都立大学健康福祉学部看護学科)
話者:大倉得史(京都大学大学院人間・環境学研究科)
司会:木下寛子(九州大学大学院人間環境学研究院)

申し込み

下記のURLよりお申し込みください。
https://forms.gle/vYWqB7Xh77331o23A

担当

田村南海子(上智大学) 、坂本希世(長野県看護大学)、木下寛子(九州大学)

  • 大会外企画
  • 研究交流委員会企画「世界を見ることを学びなおす―臨床実践の哲学から―」