締切:2014年10月末日(受付終了)

特集趣旨: 子どもやその発達をめぐる事象は、福祉、教育、看護、文化人類学など、領域横断的に 探求され続けてきており、今日では発達は生涯を通しての人のさまざまな変化を含むものとみなされるようになりました。たとえば発達心理学の領域では、アリストテレスを起源とする子どもの存在への問いは、子どもの変化やその原因について多くの法則定立的知見を見出してきました。その成果は、研究者のみならず一般にも個々の子どもを理解するときの知識として効果的に機能しています。しかしこのメリットは両刃の剣で、発達のメカニズムや全体像が優先されすぎると、あたかも発達段階や発達の理論の確認のためだけに、個々の子どもが存在しているかのような本末転倒な事態をもたらします。本来、私たちがなすべきであったこと、すなわち身近で個別的な子どもの存在を優先し、その子の理解のために役立つ情報を探ることが見失われています。

他方で子どもの発達をめぐる事象は因果関係の検証が難しく相関や依存関係が見出されるだけだといわれます。また乳幼児では、日誌研究や、参与観察、映像化なども重視されてきました。そこで子供をめぐる研究は、たとえ発達のメカニズムを優先しすぎたり、質的研究方法を自覚しない素朴なレベルだったとしても、すでに質的技法を駆使して実践されてきているのです。 研究結果は方法に依存するものですが、方法の自覚の程度にも大きく影響されます。より自覚的な質的アプローチならば、今までにない子どもの姿や解釈が見出されるはずです。このような期待から、本特集では、質的技法の卓越した特性を自覚的に利用し、子どもの新たな姿を積極的に見出し、根拠に基づいて説得力をもって主張する、そのような性質をもった、子どもをめぐる質的研究を広く募集します。以下にいくつかイメージされる研究の方向性を示します。

・個別具体的な子どもたちの生活世界を記述すること:質的研究では、従来の研究では日常から切り離されてしまう個別具体的な子どもの姿をその子どもが生きる社会文化歴史的文脈のなかでとらえることができます。個別具体的な子どもの姿を明らかにするというこ とは、 子どもたちの生活世界をつぶさに記述するということにつながります。

・子ども観・発達観の問い直し:また質的研究が人間観や認識論といった、ものの見方の変革にも関わるものであることを考えると、子ども観を問い直すような研究も求められます。”子どもの発見”以後、子どもは守られる対象としてとらえられてきた側面がありますが、子ども自身がより小さい子のことを守ったり、大人を支えたり、自ら社会に参加して発言したり決定したりします。さらに子ども観を問い直すことは、「発達」という概念を問い直すことにもつながります。

・社会変動のなかの子ども:子ども観の変化(変容)は、原因が自然であっても歴史的事象であっても、それによって引き起こされる「社会変動」と深いかかわりがあります。そ う考えると、「不登校」 「子ども虐待」「いじめ」「メディアと子ども」などの事象か らも、今を生きる「子ども」の姿が見えてくるかもしれません。

・人生における「子ども時代」:さらに生涯発達という観点で子どもをとらえると、人生を振り返って子ども時代を回想することも、子どもの質的な研究に含まれます。