締切: 2021年10月末日(厳守)→(受付終了)

特集趣旨: 教育は変化の最中にある。学習指導要領が約10年ぶりに改訂され、2020年度より小学校から順に実施される。外国語教育、プログラミング教育、主権者教育などの新たな学ぶ内容の充実と、主体的・対話的・深い学びという新たな学び方が重視されている。2020年の大学入試センター試験廃止に象徴される大学入試改革に高等教育改革、高校教育改革を加えた高大接続改革も目下進行中である。我が国の教育環境が大きく変革しようとするその動きは、学制発布、戦後教育改革に続く、明治維新以降の第三の改革とも呼ばれている。文部科学省だけでなく経済産業省や厚生労働省も、グローバル化社会、少子高齢化社会、超スマート化社会(Society 5.0)をみすえた人材育成の道筋を探っている。人を育てる現場、人が育つ現場で起こっていることは、そしてこれから起き得ることは何か。私たちは、どんな希望や展望を持つことができるのか。巷で語られる教育に関する言説を、学問の視座から客観的に問い直す必要はないのか。この大転換期に、教育にかかわるあらゆる話題を、論じるだけでなく実証的に読み解き、その解法を見出すきっかけづくりをしていきたい。

テーマ「教育のゆくえ」が研究対象とする「教育」とは、学校教育だけでなく、広く人間を対象とした教育・学習・学修・発達支援・人材育成の現場での人の成長に寄与する働きかけ全般を指すこととする。学校、家庭、企業や諸々のコミュニティ、あるいはインフォーマルまたはバナキュラーな育て学びの場もこれに含む。

特に学校で生じている大きな地殻変動は見過ごせない。アクティブ・ラーニング、アダプティブ・ラーニング、ICT、知識授受からパフォーマンスの重視、などにみられる教授・学習法の変容は今や来る未来の教育法ではなく一般的な事実となっている。しかし手法と教材教具の変化に比して、政策提言を行なう者、および現場の教員たちの教育観・学習観は、どのくらいアップデートされているだろう。「PCやモバイルを一人一台導入」といった政策に現れる「全員が」。基礎学力の担保が公教育によって必要であるとする「一律に」。教師が児童・生徒・学生を指導すべきという「集中化」。対話的で深い学びを、個体能力増進の側面のみからしか見ない「規格化」。個別最適化社会の到来をうたいながら、政策や実践には工業化社会(Society 3.0)の発想が色濃く残ってはいないか。インクルーシブ教育はどうだろう。多様性や協調性といった学力の第三要素は、その中でどのように涵養されるのだろう。グローバル教育とはなんだろう。海外渡航の機会や留学生の数を増やすことなのか。国語の時間を割いてまで英語を学ぶことなのか。文化の多様性を認め、協調するとはどういうことだろう。

また学習者の側の教育観・学習観は発達してきただろうか。教育を与えられるだけのサービスと捉え、教師の負担を当然だと思ってはいないか。働き方改革によって休日の部活動や、過大な保護者対応はどう変わるべきなのか。職務多忙化が叫ばれる中、教師志願者は減少する一方であり、人材の質の担保が必要とされている。そんな中、児童生徒・保護者には学校以外の学習の場の選択肢があり、フリースクールや広域通信制教育があらたな教育の場となるかもしれない。こうした変化によって、これまで教育だったもの・こと、及び、これまで学習だったもの・こととは、大きく異なる教育と学習が始まってきている。

現在進行していることは、またはこれから果たすべきは、教育の道具と制度の変化というだけではく、教育観・学習観の発達だということができる。新しい葡萄酒は新しい革袋に入れるべきだ。新しい手法と制度を活かすための新しいパラダイムへのシフトがそこここで目指されているはずで、その実践の小さな一歩を研究の言葉で拾い上げ、議論の俎上に載せたいのだ。

現実に人が生きて、学んでいるさま、その環境の具体に分け入って、変動期の教育を実証的に語ってくれる論文を期待したい。以下のようなトピックの新しい変革期の教育実践、教育実践研究、教授学習研究、発達研究、発達支援実践研究を求める。キャリア教育、生活の質の向上とつながる学び、教育格差、協同学習、インクルーシブ教育、ゲーミフィケーション、集団保健指導、インプロ、演劇的手法、アサーション、ソーシャル・スキルズ、コミュニケーション授業、チーム・ビルディング、ワークショップ型授業、言語活動、ICT、PBL、性教育、パーソン・センタード・アプローチ、コーチング、教員養成、ソーシャルセラピー、学校安全、防災教育、消費者教育、主権者教育、道徳教育、小学校外国語、企業研修、人材開発、生涯学習、学び合い、リジリアンス、支援教育、授業研究、特別支援教育、パフォーマンス心理学、ファシリテーション、アイスブレイク、オープンダイアログ、フリースクール、カリキュラム・マネジメント、学校支援ボランティア、地域連携、家庭教育、社会教育など。