人間は〈ことば〉の世界を生きている―これが現在の質的心理学の「常識」であり、多くの分析手法もこの前提に基づいている。しかし、元来、人間の〈ことば〉は〈からだ〉の働きに基礎を持つものとして発展してきたものである。また、どんなに〈ことば〉の世界が発展したとしても、人は最終的にはこの〈からだ〉でもって生きるほかない。そうした事実を忘れ、〈ことば〉の世界にのみ研究者の目が向くとすれば、それは人間の生に迫ろうとする質的心理学にとって大きな危機ではなかろうか。
当企画では、〈からだ〉と〈ことば〉がいかなる関係にあるのかを改めて問い直し、人間の生を捉えるためにどういった視点が重要なのかを、3人のパネリストの講演を手掛かりにして考えていく。3人に共通するのは、〈からだ〉と〈ことば〉が特異(非定型的)な結びつき方をしているように見える人々(共感覚、自閉症、幼児など)の独特の感覚世界を参照しつつ、思索を進めていることである。
〈からだ〉のいかなる働きから〈ことば〉が生まれ、いかにして我々の世界を作り出していくのか、さらにはそのことが〈からだ〉にいかなる作用を及ぼすものなのか―感覚の「異文化」との接触を通して、そうした問題への糸口を模索していく。
- 日時
2011年3月5日(土) 13:00~16:30(予定)
- 会場
キャンパスプラザ京都 4F第4講義室
- 内容
<登壇者>
・岩崎純一
文字や数字に色を感じる、音・味・匂いに色や形を感じる、風景に音を聴くなど、さまざまな共感覚を持つ。著書に『音に色が見える世界』(PHP新書)など。・西村多寿子
翻訳者兼ライター。「身体的側面から見た言語習得」の探究をライフワークの一つとし、多方面で活躍。書評、論文等多数。・村上靖彦・・・大阪大学大学院人間科学研究科。専門は現象学、精神病理学。
精神分析学にも精通。著書に『自閉症の現象学』(勁草書房)など。<指定討論者>
・浜田寿美男
幼児、自閉症、供述分析などの研究を通して〈からだ〉と〈ことば〉の関連を探究。『私と他者と語りの世界』(ミネルヴァ書房)など著書多数。<司会>
・大倉得史(京都大学大学院人間・環境学研究科)
- 参加費
学会員 無料
非会員 500円
- 主催
日本質的心理学会研究交流委員会、京都大学人間・環境学研究科質的心理学研究会
- 申込方法
「3月5日参加希望」と題したメールに「氏名」「所属」「連絡先」「会員・非会員の別」を明記し、下記の宛先まで送信ください。なお、会場の関係で定員になり次第締め切らせていただきます。
(宛先)大倉得史 tokushi_okura〔あっと〕yahoo.co.jp(〔あっと〕を@にしてください)
- 大会外企画
- 感覚の「異文化」から見る〈からだ〉と〈ことば〉~共感覚、自閉症、幼児の体験世界~