締切:2012年10月末日(受付終了)

特集趣旨:多数の「個」のなかで、ある「個」だけが特有に示す特徴や構造を「個性」と呼ぶことができます。個性は、それが個を鍵にして生じる現象であること、それが個に特有の環境と不可分であること、そしてそれが個に特有の時間の流れを基盤にしていることの3つの点で、質的研究法によるアプローチをもっとも必要とする研究対象のひとつであるといえます。

しかし心理学における個性の研究は、心理学的尺度による測定を通じて「個を序列化すること」に努めてきました。そして、ランダムサンプリングによって個をとりまく環境や個に特有の時間を相殺したデータから「個人変数間の一般的関係を解明する」ことを研究の中心とし、現在では心理学の中で量的方法にもっとも支配される研究領域となっています。そして個そのものは研究の中で忘れ去られてしまっているようにみえます。

この特集では、個性がわれわれの眼前に立ち現れる本来の姿をみつめようとする研究、個そのもの・個に特有の環境・個に特有な時間の流れが反映されるものとしての個性に焦点を当てて、それを質的研究法によってとらえようとする研究をひろく募ります。

個性がテーマであり、質的研究法を用いた研究であればすべて特集論文の対象となります。たとえば、個性そのものやその形成・変化などを質的に記述することを通じて「個をとらえる」研究、複数の個がもつ個性を質的に比較することで「個をくらべる」研究、そして「個とかかわる」ことを重要な要素とする実践について質的な手法でまとめた研究、さらに個性と質的研究法に関わる理論的考察の投稿も歓迎します。

「現象としての個性」の本来の姿をとらえ、個性を研究する学問の未来を切り開くような研究論文が多数投稿されることを期待します。

  • 書籍
  • 質的心理学研究:特集
  • 【第13号】「個性」の質的研究 ~個をとらえる個をくらべる、個とかかわる~(責任編集者:渡邊芳之・森直久)